【関連記事】「コピーは人間である。—『なんだ、けっきょく最後は言葉じゃないか。』に寄せて(元井康夫)」はこちら
伊藤公一さんがコピーの本を出す。そう聞いていちばん楽しみにしていたのは、おそらく僕だろう。かつて直属の部下として一緒に仕事をさせてもらった僕だが、知っているのはクリエーティブディレクターとしての公一さんだけ。コピーを教わる機会は、実はそんなになかった。電通の中堅コピーライター向けに行われていた「コピーゼミ」にも参加したことがない。なぜなら、僕はその頃とうに中堅を通り過ぎてしまっていたから。
クリエーティブディレクター伊藤公一の実績はいまさら僕が説明する必要もないだろうが、部下の視点でその魅力を語るなら、本来の実力以上のパフォーマンスを引き出してくれるところ。いい歳になってもパッとしなかった自分を拾ってくれて、コピーライターとしてなんとかやっていけるようにしてくれたのは公一さんなのだ。
公一さんのディレクションは明快だ。いいコピーはいいと言い、ダメなコピーはダメという。それだけ。細かなことは言わずコピーライターを自由にさせてくれて、そのうえでしっかりとした指針を示してくれる。そのブレない尺度の秘訣がどこにあるのか?そういう興味をもって読み進めた。
だが読みはじめてすぐにその期待は裏切られた。これは魔法みたいな秘訣が書いてある本ではない。これはもっと本質的な、言葉との向き合い方を学べる本。コピーライターに限らず、言葉によってなにかを伝えようと志す人ならまず読むべきだと思った。これを読んでからスタートするのと読まずにスタートするのでは、ゆくゆく大きな差が出てくると思う(僕も若いときに読んでいたら今頃もうちょっとパッとしてたかも)。
コピーの解説も、読んでいて楽しい。名作コピーたちへのリスペクトと愛にあふれている。そういえば公一さんは、打ち合わせでいいコピーを見つけたとき本当にうれしそうな顔をするのを思い出した。この本を読んだ人たちによって世の中にたくさんの素敵な言葉が生まれたら、またいい顔で笑うんだろうなあ。
藤本宗将(ふじもと・むねゆき)
dentsu zero コピーライター/クリエーティブディレクター。1997年、電通入社。コピーライターとして多くの企業のメッセージ開発に携わる。主な仕事は、ベルリッツ「ちゃんとした英語を。仕事ですから。」、本田技研工業「負けるもんか。」、からだすこやか茶W「おいしいものは、脂肪と糖でできている。」、トヨタ「トヨタイムズ」など。TCC最高新人賞・TCC賞・ADCグランプリ・ACCグランプリ・毎日広告デザイン賞最高賞など受賞。
はじめに/あとがき/解説でざっくりわかる 宣伝会議のこの本、どんな本? 関連記事
新着CM
-
クリエイティブ
【麻生哲朗×太田恵美×三島邦彦】コピー年鑑刊行記念トークイベント、5月23日に開...
-
クリエイティブ
この本が存在しなかったら。―『広告コピーってこう書くんだ!読本〈増補新版〉』によ...
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
クリエイティブ
イヤー、とにかく、もう、ゼッタイ、コレが(佐々木宏)コピー年鑑2023より
-
クリエイティブ
全広連地域広告大賞、最高賞に福岡「マリンワールド海の中道」のCM
-
AD
マーケティング
顧客へ正確に訴求するCMクリエイティブとメールマーケティング
-
マーケティング (コラム)
民間から移籍し校長になって1カ月、始業式の校長講話で生徒に教育方針を話す
-
AD
特集
【Ayudante主催】デジタル時代のマーケティング活用セミナー
-
クリエイティブ
東京ガス「IGNITURE蓄電池0円キャンペーン」テレビCMに高橋一生さん起用