ミツカンから誕生したプラントベース食品D2Cブランドの「ZENB」。2021年に主力の豆100%麺「ZENBヌードル」の安定生産が可能になったことをきっかけにヒットした。「ZENB」の特徴はD2C全盛期のコロナより前にローンチし、コロナ後も成長していることだ。EC化率が鈍化する今も「ZENB」が好調である理由と、D2Cブランドが今後も生き残っていくための条件を探る。
※本記事は月刊『販促会議』2024年9月号にも掲載されています。
ビジョナリーだからこそD2Cを手段として選んだ
ミツカンから誕生したD2C食品ブランドの「ZENB」。製品には野菜や豆などの植物を可能な限りまるごと使い、動物性原料や添加物に頼らないのが特徴だ。ミツカンが2018年に策定した「ミツカン未来ビジョン宣言」の中で掲げる「人と社会と地球の健康」「新しいおいしさで変えていく社会」の実現に向けた象徴的な事業であり、ブランドとして、2019年にローンチした。
ミツカン「ZENB」。
D2Cブランドのローンチが相次いだのは、2020年頃のコロナ禍。これまでのように小売・流通を介した顧客とのフィジカルな接点が途絶えてしまったことにより、店舗を持たずともダイレクトに顧客と繋がることができるD2Cに注目が集まったと考えられる。
しかし先に述べたように、ZENBのローンチはコロナ前。D2Cブランドの全盛期が、コロナ禍が要因だったと一概には言えない。ZENBはなぜ、D2Cに目を向けたのか。同社のマーケティングを統括する佐藤武氏は、「D2C隆盛の要因はコロナ禍における生活者の行動様式の変化により、顧客と直接繋がることができる点に価値を感じた事業者が多いからではないか」と話す。
「ミツカン、とりわけZENBがD2Cというモデルを選択したのは、ZENBというブランドを通して『人と社会と地球の健康』『新しいおいしさで変えていく社会』を実現するというゴールがあったから。要は、ビジョナリーなブランドなので、世界観を間違った形で伝えないためにも顧客と直接的に繋がる必要があったのです。
