百花繚乱のAIエージェント開発…時代ごとに変わる「エージェント」の定義とは?

ここのところエージェントについての話題が尽きません。OpenAIはResponses API⁠とAgents SDK⁠、AnthropicはMCP、GoogleはAgent Development KitとAgent Engine UIなど、各社がエージェント開発のためのツールを提供し始めています。

これらのツールは、これまでのステートレスなLLMアプリケーションから、より高度な状態と自律的な判断力を持ったエージェントを構築できるようにすることを目指しています。

と、通り一遍の紹介から始めてみましたが、「エージェント」という言葉は今日非常に多義的であり、文脈によって意味が大きく変わります。前回エージェントという言葉が流行ったのは2023年だったのですが、少し間を置いての再登場です。

当時のエージェントと今日のエージェントでは何が変わったのでしょうか。言葉の多義性の理由は、こうした短期間での変遷と共に、エージェントという言葉がバズワード化していることにあります。今回はエージェントという言葉の定義を振り返りながら、ここ数年でのエージェントという言葉の変遷と、現在のAI文脈におけるエージェントの位置づけを整理してみたいと思います。

1980年代から存在していたソフトウェア開発の「エージェント」

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ソフトウェア開発の文脈においてエージェントという言葉は古くから存在しています。1980年代には、ソフトウェアが単に受動的に命令を実行するのではなく自律的かつ能動的にユーザを支援することを目指す「ソフトウェアエージェント」パラダイムが台頭しました。

従来のソフトウェアが受動的に指示を待つ存在だったのに対し、エージェントは自ら判断し行動するプロアクティブなアシスタントとして構想されたのです。

1990年代になると、「知的エージェント (Intelligent Agent)」というパラダイムがAI研究の主流概念として確立されました。知的エージェントとは「環境を知覚してその成功率を最大化する行動をとるシステム」と定義され、この定義では特定の問題を解くプログラムから人間や企業組織まで、目的指向で行動する主体は全てエージェントとみなされます。

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岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)
岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

岡田太一(sync.dev Technical Director/Visualization Artist)

CG会社のDigital Artist からキャリアを開始。ポストプロダクションを経て、現在はビジュアルクリエイティブ領域にてテクニカルディレクションを担当。得意な分野は映像編集、ビデオ信号とリアルタイム合成、トラッキング関連など。2022年から『ブレーン』で連載中。

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