※本記事は月刊『宣伝会議』10月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。
規模の“不経済”を克服するAIビジネスモデルとは?
2カ月にわたり、企業がAIサービスを無料で提供する理由とそれにまつわるトピックスについて展開している本コーナー。前回は、生成AIサービスの無料提供戦略の構造的な課題について論じた。
後半となる今回は、現状「規模の不経済」に陥っているAIが、いかにして持続的なビジネスモデルとなりうるかについて、論じていく。
技術だけでは生き残れないNetscape Navigatorの教訓
生成AIが直面する課題を考える上で参考となりうるのが、ネットスケープコミュニケーションズが開発していたWebブラウザであるNetscape Navigatorだ。1994年に登場したNetscape Navigatorは、90年代半ばには、Webブラウザ市場で80%以上のシェアを誇っていた。しかし、MicrosoftがInternet ExplorerをWindowsに無料で提供したことで、状況が一変。シェアを急速に失い、2008年にサポート終了を迎えた。「ブラウザ戦争」とも呼ばれた、このシェア争奪戦。90年代のWebブラウザと、現在の生成AIでは収益源など大きく異なるものの、このケースから得られる教訓は依然、有効ではないだろうか。
ひとつ目に挙げられるのは「技術的優位性は一時的」である、という教訓だ。いかに技術に革新性や独自性があり、すぐれていたとしても、やがて競合企業に模倣されるのだ。2つ目は、「収益モデルの欠如は、持続可能なビジネスにおいて致命的となる」という教訓だ。当然ながら、いつまでもユーザー数を増やすために無料でサービスを提供していては、持続不可能になってしまう。
3つ目の教訓は「プラットフォーム支配の重要性をないがしろにしてはいけない」ということだ。90年代の事例で言えば、MicrosoftはOSという配布チャネルを持っていた。このことが、Netscape Navigatorとの明暗を分けたとも考えられる。これら3つの教訓を踏まえて、現在のOpenAIの在り方を考えてみると、Netscape Navigatorが置かれた状況に似た岐路に立っているといえよう。
…この続きは9月1日発売の月刊『宣伝会議』10月号で読むことができます。
