配信プラットフォームは日本のIPの脅威か、チャンスか?

本連載の第1回、第2回では、日本発IPビジネスの現在地と、それを支えてきた「製作委員会方式」というビジネスモデルの構造、そしてその課題について整理した。

製作委員会方式には“リスク分散”“展開の多角化”という強みがある一方で、“決定の遅さや複雑さ”などの弱点もある。しかし、日本のIPホルダーがいま直面している課題は、もはや内部構造の問題だけではない。グローバル配信プラットフォームの存在そのものが、IPビジネスのルールを変え始め、支配構造を生み出しつつある今の状況とどう向き合うか、だ。

IP展開に欠かせない配信プラットフォームは脅威にもなりうる

私たちは「プラットフォーム」と聞くと、YouTubeやニコニコ動画のような、“コンテンツが集約され、並ぶ場”としてのイメージが思い浮かぶ。しかし、IP・コンテンツビジネスにおいて、プラットフォームは単なる“コンテンツ集約の場”ではない。その“場”を利用するパートナー(補完事業者:例 著作権を持つコンテンツホルダー、「アグリゲーター」とも呼ばれる集約・仲介事業者を含むコンテンツプロバイダー)やクリエイター、ユーザーを巻き込み、産業全体のイノベーションの方向性をガラッと変えるゲームチェンジャーとなっている。

ここで重要性を増しているのが、「プラットフォーム・リーダーシップ」という概念の理解と活用だ。2002年にこの理論を提唱したアナベル・ガワーとマイケル・A・クスマノは、プラットフォームが産業を主導するための4つのレバー(「テコ」となる戦略)を示した。


① 企業の事業範囲 (Scope of the Firm):自社で何をやり、何を外部に任せるか
② 製品技術 (Product Technology):アーキテクチャやインターフェースをどう設計し、どこまで開示するか
③ 外部補完業者との関係 (Relationships with External Complementors):パートナーと協調するか、競合するか
④ 内部組織 (Internal Organization): 社内の利益相反をどう管理するか

インターネットがコンテンツを集積し伝播する機能を備える前に提唱された理論だが、プラットフォーム事業者が“単にコンテンツ集約の場を提供する”というレベルを超えて、コンテンツ流通のエコシステム自体のルールを塗り替える仕組みと読み替えることもできる。

実際に何が起きているのか、Netflixを例に見ていく。巨大配信プラットフォームの台頭や、そのリーダーシップのあり方が日本のIPホルダーに強いインパクトと脅威も与えている理由を整理する。

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日本発IPはどこへ向かう? 今さら聞けない現在地と進化論
まつもとあつし(ジャーナリスト、研究者)

ジャーナリスト・研究者(専修大学文学部ジャーナリズム学科特任教授)。NPO法人アニメ産業イノベーション会議(ANiC)理事長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現職。ASCII.JP・Yahoo!ニュース個人などに寄稿。著書に「コンテンツビジネス・デジタルシフト」(NTT出版)「地域創生DX」(同文館出版)など。取材・執筆と並行してコンテンツやメディアの学際研究と教育を行っている。

まつもとあつし(ジャーナリスト、研究者)

ジャーナリスト・研究者(専修大学文学部ジャーナリズム学科特任教授)。NPO法人アニメ産業イノベーション会議(ANiC)理事長。ITベンチャー・出版社・広告代理店・映像会社などを経て、現職。ASCII.JP・Yahoo!ニュース個人などに寄稿。著書に「コンテンツビジネス・デジタルシフト」(NTT出版)「地域創生DX」(同文館出版)など。取材・執筆と並行してコンテンツやメディアの学際研究と教育を行っている。

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