あの頃の自分 召喚の儀(河口泰子)

東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。今年1月には『コピー年鑑2025』が発売となりました。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。どう活用しているのか。今回は、2024年度のTCC新人賞を受賞した河口泰子さんです。

出会いは、コロナ禍ですっからかんのオフィス。
師匠のデスクに鎮座していた、とにかく大きくて分厚い本!

想像のつかない方向けに書くと、
「風の谷のナウシカ」の原作漫画セット(箱入り)と
ちょうど同じくらいのサイズです。

かなりの存在感を放っていて、
なんだこれは…?と、周囲に人がいないのをいいことに
怪訝な目で見つめる時間があったのを、鮮明に覚えています。


そんな近寄りがたい印象だったコピー年鑑でしたが、
その後、修行のために、1冊読んだら良いと思ったコピーを印刷、
良いと思った理由を書いて提出、という課題をいただいたので、
毎日リュックに詰め込んで会社と自宅を往復し、毎日ひらく間柄に。
(1度に2冊運んでいたせいで、何度か肩ひもがちぎれました)


正直当時は良いコピーも悪いコピーも何もわからなくて、
けれどたぶん、それで良かったんだと思います。

今ほど小賢しくない時期に、書き手よりも読み手に近かった時期に、
「これ好き!」「これ嫌い!」と素直に
そしてとても容赦なく選ぶしかなかったその頃の感覚は、
今思うととても貴重なものでした。


これは一考察なのですが、
大きくて分厚くて重いおかげで、コピー年鑑をひらく動作って
他に似た動作があまりないのだなあと。

机をちょっと片付けてスペースを作って、よいしょと持ち上げそこに乗せ、
ちょっと丁寧に、パラパラじゃなくパタリパタリとページをめくるあの時間。
コピー年鑑以外では、なかなか発生しないです。

だからたくさんひらいていた頃の感覚がそのまま保存されて、
その一連の動作自体が、
あの頃の自分を召喚する儀式になっているような気がします。


あれから数年経った今、仕事をしてるとたまに出くわす、
このコピー、パッと見フツーだけどよく読むと良い感じでは…?みたいな、
己の書き手としての小賢しさが出そうになる瞬間。

そんなときでもよいしょとコピー年鑑さえひらけば、
ボワワワワンと新人時代の自分が召喚されて、
大きな声で「それはフツーです!私はよく読まないので伝わりません!」
って容赦なく言ってくれたりする。

あ、やめておこう…となったり、もうちょっと磨くか…となったりと、
何度もこの儀式に助けてもらってきました。

ありがとう、コピー年鑑。ありがとう、素直すぎた頃の自分。


この感覚を忘れたくないので、ひらくのはここぞの時だけ。
なんて言い訳をしてちょっと疎遠気味ですが、
まだまだ学ばなきゃだし、載りたい!

もっともっと読み込んで、もっともっと力をつけて、けれどその上で、
あの頃の自分が「これ好き!」って言ってくれるコピーを
載せ続ける人になれたら御の字です。

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河口泰子(かわぐち・やすこ)

博報堂クリエイティブ・ヴォックス コピーライター / CMプラナー

1997年さいたま生まれ。2020年博報堂入社。2024年にAdobe「PDFラブレター」でTCC新人賞を受賞し入会。OCC最高新人賞、ACCアンダー29、ヤングスパイクス日本代表・本戦GOLDなどを受賞。最近の仕事に、ヨシケイ「ヨシケイさんと、家事分担。」、マカロニえんぴつ10周年「あなたにも、いて欲しい。」など。

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コピー年鑑と私
東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2025年度の編集委員長は、古川雅之氏。『コピー年鑑2025』の詳細・ご購入はこちら

東京コピーライターズクラブ(TCC)

東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体。毎年、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、受賞作品のほか優秀作品を掲載した『コピー年鑑』を発行している。TCC新人賞審査に応募し、新人賞を受賞することで入会資格が得られる。2025年度の編集委員長は、古川雅之氏。『コピー年鑑2025』の詳細・ご購入はこちら

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