東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。今年1月には『コピー年鑑2025』が発売となりました。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。どう活用しているのか。今回は、2006年度のTCC新人賞を受賞した井口雄大さんです。
思うに、これまでの人生で、自分は何一つとして自力で勝ち取ったものがない。努力していないわけではないが、それは誰もがするレベル。人並み程度だと思う。
ただ恵まれただけなのだ、環境に。様々な事情が入り混じった複雑なオリエン。並び立つはずのない異なる立場の正義。リクエスト通りに修正すれば、すぐに終わるし、早く終わらせた方がお互いのためでは?という誘惑。間に挟まれた関係者の「納得しなくてもいいから受け入れてほしい」と言わんばかりの眼差し。そういうものをすべて拒否して、「なんか違う気がする」という感覚を信じ、周囲のいろんな声を聞きながらも、みんなが生理的に納得できるロジックをどうしたら組み立てられるか頭を悩まし、最後まで粘ることが当たり前。そんな環境が自分に授けた目に見えない最低合格ラインがあって、それより上でなんとかしなくてはと藻掻いていると、たまにラッキーパンチもあって、褒められたり、賞がもらえたり、というだけなのだ。
この歳になって改めて思います。うちの会社は過去から現在まで、先輩も後輩も、考えること・つくることに、厳しくて、必死で、悪口は刃物より鋭くて、素晴らしいと。入社したときは普通の馬なのに、気づいたらみんな立派なサラブレッドになっている素晴らしい牧場だと。
もしもそんな環境が身の回りにないなら、ぜひコピー年鑑を買うべきだと思います。20代の頃は、読み込んで、分析して、いいコピーを書くための方程式を見つけたい!と思ったこともありましたが、そんなことより、ただひたすらに、或いはおもむろにページをめくり、その世界に身を委ね、これはいい、これはよくわからん、と反応しているだけで、あなたにしか見えない合格ラインが、きっとできていくはずです。そして驚くべきことに、自分がすぐにそれを超えられるかは別として、多くの厳しい審査員の目をくぐり抜けた「掲載」というレベルより高いところに、あなたはその合格ラインを設定するのです。
