AI時代、企業のクリエイティブ組織は何を守り、何を変えるべきか

生成AIの業務活用が進む今、クリエイティブ組織の役割が問い直されている。「AIに何を任せ、人は何を担うのか」。コンテンツ量産の圧力が高まる中、クリエイティブの価値をどう再定義するか。アドビの生成AI「Adobe Firefly」の思想と機能から、その手がかりを探る。
「Adobe Firefly」トップページ

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コンテンツの増加と限られた人と時間

アドビが2023年から提供する「Adobe Firefly」はアイデア出しからコンテンツの生成、編集や量産までをひとつの環境でカバーする、クリエイティブ制作のためのAIだ。Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなど「Adobe CreativeCloud」のアプリケーションにも機能として搭載されている。

アドビでは2010年代からPhotoshopでコンテンツに応じた塗りつぶしの機能に機械学習・人工知能を用い、2019年にビデオ製品にも搭載。2020年にはPhotoshop上で、シンプルな操作で顔の表情などを変えられる「ニューラルフィルター」などを実装した。2023年からは「Adobe Firefly」として、生成AIを本格的に導入。Creative Cloudのアプリとも一体化し、刷新を続けている。

背景には、全世界的に流通するコンテンツ量の増大がある。「仮に5つのプロダクトがあり、チャネルが15種類なら75種の素材が必要。さらにグローバル展開で35言語に対応し、そのパターンが複数となれば、無限に増える。クリエイターは時間の7割を量産などの単純作業、つまり“非クリエイティブな業務”に費やしていると言われています」。こう説明するのは、アドビでFireflyを含むCreative Cloudの販売推進を担当する川島修治さん(デジタルメディア営業戦略本部 Creative Cloud Enablement Specialist)だ。

「特にSMB(中小企業)の現場では、企画・制作・進行管理・効果検証まで一人で担うことが多く、求められるアウトプットの種類と量は増え続けている。一方、時間や人手は増えていない状況です。だからこそ修正対応やサイズ展開、素材調整などの作業をAIがサポートすることには大きな意味があると考えています」。コンテンツ量の増大は、単なる作業負荷に留まらない。限られた時間の中で、クリエイターが「考え、発想する」ことに割ける時間そのものが失われつつある――それが、今多くの企業のクリエイティブ組織が直面する課題だ。

考え、価値を生むのは人であり続ける

アドビがAI戦略において一貫して掲げているのは、「クリエイティブの価値は人間が中心」という考え方だ。これはAIを「代替」ではなく「拡張」の道具として位置付ける発想でもある。だからこそアドビはFirefly単体の性能だけでなく、Photoshop、Illustrator、Creative Cloudの各アプリと一体化させ、発想からアイデア出し、制作、量産までをひとつの環境でカバーする設計を続けてきた。「あくまで考え、発想し、価値を創出することは人間の役割。これまで単純作業のためにかかっていた時間を企画や発想といった本来注力すべき創造的な仕事に充てることができれば、クリエイティビティをより拡張できます。なおかつFireflyなら“速く、大量に、ブランドらしく、安全につくる”ことが可能です」。

前述のとおり、Photoshopに2010年代から搭載してきた機械学習・人工知能の機能を土台に、2023年から「Firefly」として生成AIを本格導入。人間が担う領域を明確にした上で、それ以外をAIに委ねるという役割分担の設計思想が、その根底にある。

変えるべきは時間配分とスキルセット

Fireflyがサポートするのは、画像や動画などの素材制作・編集や量産だけではない。アイデアの創出や発想といった局面で、複数のビジュアル案やアイデアを並べて比較検討できる「Fireflyボード」が2024年から提供されている。「初期の発想段階から複数の方向性を可視化し、画像案やデモ動画の作成をチームで共同作業しながら進めることができます。たとえば人物写真の服装の着せ替え、動き方などのバリエーションを瞬時に確認・共有が可能です」。ほかにもロゴの配置やキャラクターの表情の変更、2枚の画像のブレンドなども一度に十数パターン以上比較でき、頭の中のイメージの具現化とともに、自身が思いつかなかった発想に出会えるという利点もある。

一方、コンテンツの実制作の場面では、Photoshopなどのアプリケーションの中でFireflyを活用できる。画像内の家具などアイテムの配置の回転、背景との調和など、対象物の配置換えや構図づくりのトライアルがしやすくなった。さらに制作した画像を量産する場面ではFireflyの「プロダクション」機能を使い、一括操作で大量の処理が可能だ。画像の背景の統一など、煩雑な作業も任せることができる。

いずれも生成AI機能の利用はクレジット制となっており、契約しているプランに付与された生成クレジットで利用できる(不足時は追加購入可)。GoogleやOpenAIなど他社が提供する生成AIツールとも連携しており、Creative CloudおよびFireflyの中で一括して利用・選択できる。

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クリエイティブなコンセプトを生成・リミックスする「Adobe Firefly ボード」。

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Fireflyを中心としたアドビの制作環境が提供する価値。
(C)2026 Adobe. All Rights Reserved.

権利・ガバナンスへの向き合い方

もうひとつ、企業が変えるべき点がある。生成AIと権利問題への向き合い方だ。アドビの調査では、日本企業の60%が画像生成AIを業務で使用する一方、社外向け発信での活用は20%に留まるというデータがある。この差は、技術への不安というより、社内ルールや管理体制が未整備であることの表れだ。「アドビでは許可を得たコンテンツや、著作権保護期間の満了でパブリックドメインとなったコンテンツのみをAIの学習ソースにしています。利用者がAIに入力したコンテンツからは再学習しないようになっており、ネット上の画像もマイニング対象としないようにしています」。

Fireflyは商用利用を前提に設計され、著作権にも配慮した仕組みを備える。だが、こうした仕組みを「安心して使える」段階に留めず、社内でどう運用ルールを設計し、誰が判断責任を持つかという点まで踏み込めるかどうかが企業側の次の課題になる。

法人向けのFireflyプラン

このほかにも便利な機能が多数あり、次々とベータ版がローンチされている。3月には、企業やブランドらしさを維持した上で素材を生成できる「Firefly Custom Models」のベータ版がグループ版に導入された。企業やブランドにとって理想的なトーンやテイストを事前に指定して読み込ませることで、それらを踏まえた画像などの生成が可能だ。さらには「こういう雰囲気にしたい」「このサイズでも展開したい」と伝えると、Creative Cloudの複数のアプリを横断して、必要な工程を組み立てながら実行する「Creative AI Assistant」のベータ版も6月から提供が始まっている。

また8月からは新たに法人を対象としたAdobe Fireflyグループ版を提供し、「Pro」「ProPlus」「Premium」というプランを用意した。Fireflyのほか、デザインのプロではない人も気軽に使える「Adobe Express」やPhotoshopのWeb/モバイル版も付属する。「生成AIは“同じような結果を量産する道具”ではなく、“自社らしい表現の幅を広げるための道具”として使うことができます。クリエイターのほか、デザインのディレクションや選定に関わるマーケターやプランナーの皆さん、企業でAI活用を推進する方にもお勧めです。クリエイティブの基盤ワークフローをサポートするFireflyをぜひ試していただきたいです」。

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川島修治

アドビ
デジタルメディア事業統括本部 営業戦略部
Creative Cloud Enablement Specialist

お問い合わせ

アドビ株式会社

URL:https://www.adobe.com/jp/

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