変革とは、未来を選び直し続ける力である(山本章代)

『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、IR支援を行うウィルズの山本章代さんが『「なりわい」革新 事業×組織文化の変革で経営の旗印をつくる』(望月真理子・中町直太・朝岡崇史著)を紹介します。

本書を読み終えて改めて感じたのは、企業変革の成否を決めるのは、新規事業の斬新さや一時の技術革新ではなく、自社が社会に果たす役割を問い直し、事業と組織を同時に組み替える力だということである。本書が扱う「なりわい」は、事業を別の言葉で定義し直すための概念ではない。社会の中で何を大切にし、どのような役割を果たしていくのかという「企業の生き様」を問い直し、何を変え、何を変えずに未来へ引き継ぐのかを判断するための、経営の視座である。

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「なりわい」革新 事業×組織文化の変革で経営の旗印をつくる』(望月真理子・中町直太・朝岡崇史著)定価2,200円+税

成熟した企業にとって最も難しいのは、現在の事業が機能している間に、次の変化へ踏み出すことである。既存事業の成功は良質な経営資源を生み出す一方、その成功を支えた前提を固定化してしまう。やがて社会の期待と自社の提供価値に隔たりが生じても、従来のものさしだけでは変化を捉えられなくなる。本書が示しているのは、変革とは一度の大胆な意思決定ではなく、自社と社会との関係を継続的に捉え直す能力だということだ。守るべき本質と、更新すべき仕組みを峻別できる企業だけが、持続性を獲得できる。

その意味で重要なのが、顧客側の変化と組織内部の変化を分けて考えないことである。新たな顧客価値を掲げても、従業員の日々の判断や行動が変わらなければ、戦略は実行されない。一方、組織文化を刷新しても、それが顧客や社会に届く価値へ転換されなければ、自己目的化してしまう。複数の企業事例から浮かび上がるのは、事業モデルと組織文化、顧客体験と従業員体験を一体で設計することの重要性である。変革とは、戦略を立てることではなく、戦略が実行され続ける「仕組み」を組織の中につくることなのである。

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宣伝会議のこの本、どんな本?
宣伝会議 書籍編集部

宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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