GIGAスクール構想でタブレットが1人1台配られ、答えのない問いを子どもたち自身が考える授業が広がっている。環境は変わったが、教科書と社会を橋渡しする素材は学校の中だけでは足りない。ベネッセコーポレーションの岡部優氏は、企業との連携にその答えを探る。
企業の宣伝活動ではなく
同社が昨年度から進めるのが企業コラボだ。企業の活動や知見を教材化し、全国の小中学校に届ける。基盤は学習ソフト「ミライシード」で、全国の約半数にあたる約1万2000校、410万人の小中学生が利用しており、これまでに20社以上の企業・団体と連携してきた。
学校側には環境・資源循環や防災・まちづくりといった扱いたいテーマがある一方、最新事例を探す負担や子ども向けに編集する難しさといった課題を抱える。それゆえ、企業が持つリアルな知見は、そのまま学校が求める題材になる。
ただし企業を「知る」授業ではない。身近な問いから始め、社会課題を知り、友達と考えを共有し、自分たちにできることを考える。この4段階で、子どもたちが「自分ごと」として考える授業を設計するという。「単なる宣伝の活動ではなく、企業市民として社会でどんな役割を果たしているかを伝えます」と岡部氏は言う。
出所:ベネッセコーポレーション
森林の単元に、自社の森を
三井不動産が選んだのは、小学5年生社会科の単元「私たちの生活と森林」だと、同社の齋藤誠晃氏は話す。同社は北海道の保有林で植える・育てる・使うを循環させる「“終わらない森”創り」を進め、その木材を使う木造オフィスビル「日本橋本町三井ビルディング&forest」の竣工も控える。
授業は旭川市立永山南小学校と中央区立城東小学校をオンラインでつないだ。旭川は「森を育て守る」、東京は「都市で木を使う」と、それぞれ地域に身近な視点を事前に学び、当日は互いに発表し合う。
単発で終わりがちな子ども向けイベントと違い、教材は横展開でき、関わる産業の課題や社会的背景まで一緒に伝えられる。「正しく情報を伝えることができます」と齋藤氏。岡部氏も「教科書だけでは想像しにくい林業の現場を、実際の活動として見せていただけました」と振り返る。
深い価値を、広く届ける
富士通は以前から、社員が学校に出向いて子どもと対話する社員参加型の教育支援を続けてきた。2023年度以降、延べ510名が全国282校、約1万1000人に学びを届けている。ただし人員にも地域にも限りがあり、価値の高い活動ほど広げにくい。
そこで加えたのが教材提供型だと、同社の佐藤康一郎氏は話す。社員が出向けば対話は深まるが、教材なら同じ内容を全国で繰り返し使える。深さと広がり、どちらが欠けても社会は動かない。ただし富士通を紹介する教材はあえてつくらず、社会課題を起点に子どもが考える余白を残したという。
最後に岡部氏は、企業の活動を子どもたちへ広げる場として、学校を選択肢に入れてほしいと呼びかけた。子どもの学びが社会とどうつながるのかを伝えることで、学び自体が深く、広くなる。教科書と社会をつなぐ試みは、企業にとって次世代との接点にもなりつつある。
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