店舗内装から街づくりまで、事業を動かす「空間」をつくる 東急エージェンシーが新クリエイティブ拠点を新設した理由

生活者とのリアルな接点が再評価される中、企業が「空間」に求める役割は、デザインの美しさや効率性にとどまらず事業成長やブランド体験の創出へと拡張している。「オシャレな空間をつくったが、集客や販売につながらない」「建築とプロモーションの設計が分断されている」といった課題に対し、「総合広告会社のコミュニケーション設計力」と「一級建築士事務所の設計・施工力」を掛け合わせた独自のソリューションを提供しているのが、東急エージェンシーの空間クリエイション局だ。
 
長く拠点を置いてきた東京・渋谷にこの7月、新たなクリエイティブラボ「SHIBUYA SCENE(シブヤシーン)」を開設した。渋谷の再開発や空港内の商業施設をはじめ、長年にわたり大型プロジェクトを支えてきたプロフェッショナル集団は、リアル空間を通してどのような「シーン(物語)」を世の中に生み出そうとしているのか。空間クリエイション局の池田一成局長、井上友香理氏、佐藤勇輝氏、伊藤航平氏に聞いた。
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空間創造を戦略事業へ「SHIBUYA SCENE」で目指すもの

世の中のデジタルシフトが進む一方で、コロナ禍を経てリアルなコミュニケーションや「場」の価値が再認識されている。この潮流を受け、「空間創造」を戦略事業として推進している東急エージェンシー。その新たな拠点として2026年7月に開設したのが、クリエイティブラボ「SHIBUYA SCENE」だ。

写真 SHIBUYA SCENE

メイン空間は打ち合わせや休憩、パートナーのワークスペースとして使う。天井が高く開放的なのが特長だ

池田一成局長は、新拠点開設と組織改編の狙いを次のように語る。

「もともとは『商空間クリエイション局』という名称で2部体制でしたが、商業施設に限らず幅広い空間創造ビジネスへと領域を広げるため、『商』の字を外して現在の局名に変更しました。あわせて、クライアントから見てより分かりやすく、専門性を掛け合わせやすいように『プロジェクトデザイン部』『ブランドデザイン部』『スペースデザイン部』の3部体制へと再編しています」(池田氏)

写真 人物

東急エージェンシー 事業共創本部 副本部長 兼 空間クリエイション局長 池田一成 氏
建築学科(意匠専攻)卒業後、総合内装会社を経て1997年に東急エージェンシー入社。 以来30年にわたり、一貫して空間クリエイション局にて空間創造事業に従事。複合商業施設の新規出店から多岐にわたる各種リモデルプロジェクトまで、企画・設計・施工・内装監理をワンストップで手掛け、クライアントのパートナーとしてプロジェクトを数多く推進する。

「SHIBUYA SCENE」は、クライアントやパートナーと新たな価値を生み出す「ラボ」としての役割を担う。プロジェクトマネジメントを担当した伊藤航平氏と、空間デザインを手掛けた佐藤勇輝氏は、空間に込めたこだわりを明かす。

「『SCENE』という名称には、ただの場所・空間(Space、Place)ではなく、そこから新しいストーリーや出来事、人々の時間の過ごし方(Scene)をつくっていくという思いが込められています。エントランスは無機質でクールなしつらえにする一方で、中のコミュニケーションエリアは木目やグリーンを取り入れ、カフェのように会話が生まれやすい温度感に。さらに奥には色調を落とした集中ブースを配置し、アイデアを練るサイクルがこの空間内で完結するようにデザインしました」(佐藤氏)

「昨年12月の構想から7月稼働というタイトなスケジュールでしたが、コンセプト設計からプロジェクトマネジメント、施工まで全体を見て完遂できたのは、私たちの組織がこれまで培ってきたノウハウの集大成だと感じています」(伊藤氏)

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東急エージェンシー 事業共創本部 空間クリエイション局 スペースデザイン部 ディレクター/デザイナー 佐藤勇輝 氏(左)
工学院大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。総合内装会社デザイン室、アパレル会社店舗デザイン部、内装デザイン・施工会社にて物販店、飲食店のほか、大型商業施設の環境エリア、シェアオフィスなど、多岐にわたる空間デザイン・設計を手掛ける。2024年に東急エージェンシー入社後は、大型再開発案件への参画、新店舗立ち上げのデザインディレクション、複合施設改装デザイン設計などを担当。
東急エージェンシー 事業共創本部 空間クリエイション局 プロジェクトデザイン部ディレクター 伊藤航平 氏(右)
建築設計系専門学校卒業後、総合内装会社に17年勤務。百貨店・SC・駅ビル・駅構内など多岐にわたる案件に施工フェーズのプロジェクトマネージャーとして携わったのち、2025年東急エージェンシーへ入社。入社後も複合商業施設の周年改装、空港内商業施設の設計、体験型施設の施工、店舗設計施工などを担当する。

広告会社×一級建築士事務所が生み出す4つのソリューション

空間クリエイション局の最大の強みは、総合広告会社でありながら一級建築士事務所登録をしている点だ。これにより、上流のブランドコンサルティングから空間の設計・施工、竣工後のコミュニケーション施策まで、「プロデューサー型の事業体制」で一貫して担うことができる。

ブランドデザイン部のプロデューサーである井上友香理部長は、事業課題に合わせて提供する「4つのソリューション」について解説する。

写真 人物

東急エージェンシー 事業共創本部 空間クリエイション局 ブランドデザイン部長/プロデューサー 井上友香理 氏
早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻修士課程修了。2012年東急エージェンシー入社後、マーケティング局にて広告戦略立案業務に携わったのち、空間クリエイション局へ。店舗・複合商業施設を中心に、生活者との関係を築き、事業成長をし続けるためのブランディング・プランニング・デザインを手掛ける。新業態開発の実績多数。

1つ目は、空間事業自体をブランド化する「ブランドトータルプロデュース」だ。渋谷駅周辺で現在も進行中の大規模再開発プロジェクトでは、街区全体のブランディングやネーミングといった最上流から伴走。同時に、商業施設の環境設計・施工、オープン後のプロモーションまでをトータルでプロデュースしている。

2つ目は、商材と顧客の接点を構築する「商空間トータルプロデュース」だ。郊外出店を主力とする店舗チェーンが都心に開設したコンセプトショップや、化粧品や食品メーカーが開設する店舗の業態モデル策定から販売戦略、ディスプレイ、制服、接客コミュニケーションのマニュアル策定など、文字通り「トータルプロデュース」で支援している。

「この領域は、『売りたい商材やサービスはあるが、それをどのような空間でコミュニケーションしていけばいいのか分からない』と悩むメーカー様からのご相談も非常に多いです。ある大手化粧品メーカーの店舗開発では、『販売ストーリーがない』という事業課題に対し、肌診断などを活用した接客フローの再構築や、顧客との関係値を築くストーリー設計から入り込み、そこから最適な空間デザインへと落とし込んでいきました」(井上氏)

3つ目は、施設開発の投資効果を最大化する「施設環境トータルプロデュース」だ。オープンした後のリニューアルや、テナントの入れ替え時の内装監理、環境面を含めた投資効果のコンサルティングなど、施設が恒常的に価値を生み出し続けるためのハード面のトータルサポートを行う。

そして4つ目が、企業ミュージアムなどを対象とした「体験型コンテンツトータルプロデュース」である。ある大手インフラ企業の無料体験施設において、子どもたちが体験しながら学べる展示室をゼロから企画・設計。キッズデザイン賞を受賞した実績がある。

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空間クリエイション局が手がける4つの領域

さらに、東急グループとして街づくりや鉄道、ホテルといった多様な生活者接点のナレッジを持っていることも、プロデュースの幅を広げる要因となっている。

「最近は、空港の民営化に伴うターミナルビルのリニューアルも手掛けています。クライアントやパートナー企業の方々に私たちの提供できる機能をご説明すると、『東急エージェンシーはこんなことまでやられているんですね』と驚かれることも多いですね」(池田氏)

「共創空間」の需要も拡大 広がる体験価値の可能性

リアル空間が持つポテンシャルは、商業施設や小売店舗にとどまらない。井上氏は、これからの空間クリエイションが求められる新たなフィールドについて展望を語る。

「これまでは、BtoCのメーカーによる、直営店などでカスタマーと直接つながるための空間づくりが主流でした。しかし最近は、BtoBメーカーが『他企業や顧客と共創(Co-Creation)する場を持ちたい』と考えるケースが増えています。商談や営業のためのショールームという役割にとどまらず、人と人が出会い、新たなイノベーションが生まれる『ラボ』や『共創スペース』をどうプロデュースするか。このような領域こそ、企業のコミュニケーション課題を長年解決してきた広告会社である私たちが、空間設計というアプローチで貢献できるチャンスだと考えています」(井上氏)

オンラインであらゆるモノが買え、情報が手に入る時代において、生活者がわざわざ足を運ぶ「リアル空間」への期待値は高まっている。求められるのは、見た目の美しさだけではなく、企業の事業課題を本質的に解決するコミュニケーションの設計だ。

「これまで私たちの局は、東急グループの案件や、既存のクライアントに寄り添いながら少数精鋭で黒子のようにビジネスを展開してきました。しかし、この『SHIBUYA SCENE』の開設を機に、我々が持つノウハウやソリューションの価値を、もっと世の中に発信していきたいと考えています」(池田氏)

お問い合わせ

株式会社東急エージェンシー

住所:〒105-0003東京都港区西新橋1-1-1日比谷フォートタワー
Mail:kouhou@tokyu-agc.co.jp

 

【SHIBUYA SCENE】

〒150-0047 東京都渋谷区神山町9-6 日本会館2-5階

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