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コラム

高広伯彦の“メディアと広告”概論

検索連動型広告がもたらした「悪しき」広告観

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「最も効果が高い広告手法」は本当か

検索連動型広告を大々的に実施している企業に勤めていた頃から感じていたことを書こうと思う。それは、この広告ビジネスが広告業界にもたらした「悪しき」考え方だ。

遡ること十数年前、当時まだ「総合広告代理店」がネット広告に本腰を入れてなかった頃、この領域が拡大成長するに至った立役者は若い世代が中心になって作り上げてきた「ネット専業広告代理店」である。このことは疑いもない事実であり、まだまだ「売れる媒体」ではなかったこの分野を、ネットバブルが崩壊しようが現在まで持ちこたえさせたのは、彼らの「売り物」がネット広告しかなかったからだった。それゆえ、彼らが「売り物」を広告主に説明するときには従来の広告と違うセールストークが必要であった。

それは、(インターネット広告業界に古くから従事していた人であれば一度は聞いたことがあると思うが)「テレビとか新聞とかマスメディアは効果が取れませんよね。ネット広告は効果がはっきり分かるので費用対効果がちゃんと出ますよ」というようなフレーズだった。僕はネット広告業界が現在「CPA(Cost Per Action = 成果報酬型)の呪縛」にとらわれ、電通発表の「日本の広告費」においてもネット広告が伸びているとされてもネット広告業界の若者たちがハッピーになれない一端は、このフレーズによる負の遺産によるものが大きいと思っている。

そして検索連動型広告が誕生し、上陸した。検索連動型広告はユーザーの意図・興味関心が「キーワード」という形で現れ、それが検索された結果、それに関連する広告が出てくるから他のどの「広告」よりも効果が高い。そしてコンバージョンに至りやすい。結果として他のネット広告は「効果が悪い」と言われることになり、マスメディアも「効果が悪い・見えない」ものとして位置づけられてしまう。

しかし、僕がグーグルにいたころ、いわゆるブランド企業にとっては逆に「ブランディングに貢献しない広告」として映り、検索連動型広告に出稿する広告主は少なかったのみならず、通信型の資格教育ビジネスをやっているところや、テレビや独自の雑誌を作り通販を行ってきた従来型通販企業なども検索連動型効果に大きな期待を寄せていることはなかった。なぜか? 検索連動型広告では「知りたい」、「欲しい」といった「欲求を生み出すこと」ができないからだ。検索行動から始まる情報行動・消費行動なんてない。なぜ検索をしたのか? そのことをちゃんと理解していなければ実は検索連動型広告もちゃんと機能をしない。(次ページに続く)