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スパイクスアジアにみる、これからのデジタルマーケティング

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文:ビルコム・小川丈人

スパイクスアジアとは

アジアパシフィック地域の国際広告祭「スパイクス アジア広告祭(Spikes Asia Advertising festival)」が2011年9月18日~20日、シンガポールで開催されました。ここ数年コミュニケーション産業においてもアジア市場への注目が高まる中で、年々エントリー数が増加し、アジアの地域の広告賞としては最大級の規模となっています。

「スパイクスアジア2011」における受賞作品の傾向を探りながら、これからのデジタルマーケティングの方向性について解説したいと思います。

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「スパイクスアジア 2011」会場の様子。右下は、米クリスピン・ポーター&ボガスキー(CP+B)の
CCOジェフ・ベンジャミン氏の講演

従来型キャンペーンの枠組みを超える作品が受賞

今回、私が「スパイクスアジア2011」に参加して最も印象的だった作品のひとつが、デジタル部門でグランプリを獲得した、ペディグリーの「Doggelganger(ドッゲルゲンガー)」です。これは、ペットフードをはじめとするペット用品の総合ブランドであるペディグリーとNECが共同で開発した、保護された犬の里親探しサービスです。ユーザーが自身の顔写真をアップロードすると、目、鼻、口などを詳細に解析して、自分の顔に似ている保護犬を探し出してくれます。マッチングされた犬を引き取ることや、ドネーション(寄付)を行うこともできます。

ペディグリーは、すべての犬が幸せに暮らせる社会を支援することを目的としたドッグアドプション活動を行っています。この施策は “犬のためにできるすべてを”というペディグリーの本質的価値を「体感型のサービス」として表現したことがグランプリという評価につながったのではないでしょうか。

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またモバイル部門で金賞を獲得した、「Impulse Saver」も今年のスパイクスアジアを象徴する作品のひとつです。これはオーストラリアの銀行ウェストパックが制作した無料のiPhoneアプリです(カンヌライオンズではプロモ&アクティベーション部門で銅賞を獲得しています)。

ニュージーランドでは、衝動買いにより多くの顧客資産が失われているということが、詳細な統計データで判明しています。これを抑制するために、「衝動買い」ならぬ「衝動貯金」ができる仕組みをアプリで実現しました。ユーザーは、このアプリに搭載されている衝動貯金ボタンを押すことで、自分の設定した金額(最大1回50NZドル)を普通口座から貯蓄用の口座に移管することができます。衝動的に欲しいと思ったときに、自分を戒めるために押すボタンとしても有用で、ユーザーの生活課題の解決にもつながります。

この施策は、多くのメディアに取り上げられ、ウェストパックが顧客の「wise spending」(賢い支出)をサポートする銀行であるとのポジショニング確立に寄与しました。これもキャンペーンというよりは、生活者の行動変化をもたらす「仕組み」の開発といえるでしょう。(次ページへ続く