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コピーライターを感動させた4年2組「俳句の授業」から考えるファシリテーターの役割

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【前回記事】「ブレスト会議のファシリテーターが注意するのは「か・き・く・け・こ」」はこちら

新しいアイデアを考えるための企画会議や情報共有の会議など、広告クリエイティブやマーケティングに関する仕事に会議は付きもの。その会議の質が、その後のアウトプットの質を左右するといっても過言ではありません。そこで、こうした会議をコーディネートするファシリテーターの役割と進行のポイントについて、宣伝会議「ファシリテーション力養成講座(3月13日開講)」の開講を記念して、講師である博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター 岡田庄生氏に聞いた。

画像提供 Shutterstock

博報堂 コンサルティング局 ファシリテーター 岡田庄生

大勢の人たちを一斉にハッとさせる問い

ファシリテーションとコーチングは似ていると言われています。一番の共通点はどちらも「問いが大事」ということです。
コーチングであれば、目の前の人にだけ深く考えさせるような問いを考えれば良いのですが、ファシリテーターは大勢の人たちを一斉にハッとさせるような問いを投げかけなくてはいけません。近著『お客様を買う気にさせる「価値」の見つけ方』でも紹介した、ある小学校での授業のエピソードを使いながら、良い「問い」を見つける方法について考えてみたいと思います。

東京郊外のある公立小学校の4年2組で、総合学習の時間を使った授業をすることになりました。

クラスの担任の先生は、国語を専門とする研究熱心な人で、授業の一環として一年を通じてつねに子どもたちと俳句づくりに取り組んでいました。先生の楽しい授業のおかげで、4年2組の子どもたちは俳句が大好き。クラスには、伊藤園が行なっている「お〜いお茶新俳句大賞」コンテストで選ばれて、緑茶のペットボトルに作品が載った子どもまでいました。

そこで私は、授業を通じて「それほど俳句に興味がない他のクラスの子どもたちが、俳句がついついやりたくなるポスターをつくること」を子どもたちに体験させることにしたのです。
 
テストを開催することまで決まりました。このときはまだ、「約40人の子どもたちが友達や親に頼めば、40句ぐらいは集まるかな…」という程度の期待感だったのですが、これが後々大きく裏切られることになるとは、このときは少しも思っていませんでした。

初めての授業では、早速俳句のよさについて子どもたちに考えてもらいました。まず私から、子どもたちにこんな質問を投げかけました。

「俳句のここが面白い! と思うところはどこだと思いますか?」

子どもたちから、すぐに色々な答えが出てきます。

「いつでもどこでもできるところが面白い」
「空き時間がつぶれるところがいいよね」
「できたときに、気持ちいい!」

ある程度答えが出てきたところで、私からさらに質問を投げかけます。

「たしかに、俳句はいつでもどこでもできるのがいいし、空き時間も楽しく過ごせるよね。でもそれって、たとえば、マンガやゲームでも、同じことが言えそうだよね。マンガにも、ゲームにもない、俳句のよいところを考えてみてね」

そう言われた子どもたちは、「うーん」と悩みだします。先ほどの質問に対しては反射的にすぐに答えられたのですが、そう言われるとすぐには答えられません。俳句ならではのいいところを見つけるのはちょっと難しそうだぞ…。子どもたちの、いつもとは違う本気の脳が動き出したようでした。

とはいえ、まだまだ頭が柔軟な子どもたち。ユニークな意見がたくさん出てきました。

「心が落ち着くところ」
「17音で想いが伝わるところ」
「自分の頭を動かしている感じ」

およそ10歳とは思えない渋い答えから、なるほどと思わせるものまで、俳句ならではのよさを見つけようとした努力の跡が見えます。
わずか45分程度の授業時間でしたが、最初の「いつでもどこでもできる」から出発して、色々な角度から俳句のよさを見つけ出すことができました。子どもたちの顔からも、色々と話し合えた充実感を感じていました。

しかし、これらの答えはまだ俳句のよさの一部にすぎません。
「来週の授業には俳句の達人が来ます。みんなよりもずっと俳句について知っている達人に、俳句のよさを聞いてみましょう」
「達人が来る」と聞いて、テンションが上がる子どもたち。残った時間で、俳句の達人に質問したいことを考えてもらいました。

次ページ 「プロのコピーライターが「何も言えねぇ…」へ続く


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