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コラム

世界のクリエーティブ

「コピーライター+アートディレクター+?」

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遡って見てみると、かつて在籍していた180(ワンエイティー)では、ことさらインタラクティブという名目ではないですが、ノントラディショナルなアイデアを足す「3人目のクリエーティブ」として僕はチームに参加していました。でもこのやり方は個人のスキルに強く依存していることから、小さな成功は作れても、大きな流れや新しいプロセスを作るには至りませんでした。

Old Spice

P&Gのデオドラント「Old Spice」のCM。話題のバイラルキャンペーンでカンヌの2010年
フイルム部門でグランプリを受賞。こちらもワイデン+ケネディ ポートランドが制作した

BBHでは逆にトラディショナルなアートディレクターという肩書きでしたが、不文律で結構自由にインタラクティブな仕事を任せてくれていました。しかしBBHのプロセス上、インタラクティブについて知識はあるけど実際の制作経験はないプランナーたち(ちなみに最近アメリカではこういう人々を揶揄してDigital Ninjaと呼んでいます)に多くの権限があった点に問題がありました。そのせいで、完成したものがロジックでは正しいけれどクリエーティブ的には面白くないものになってしまう事態が散見されました。

上記のようなトライアル&エラーを経て、僕は以前も書きましたがクリエーティブディレクターとテクニカルディレクター/プロデューサーのチームがこれからの理想のチームのありかたなんじゃないかと思っています。もっというと、インタラクティブの世界では当たり前の、アイデアを考えた人が自ら作るというプロセスやDIY精神、そして創造と制作が本来不可分であるという事実をみんながきちんと理解しないといけない。これは全部を自分一人でやらないといけないということでは決してなくて、そういった不可分な要素を理解した上でチームを組んで制作するのが必要だということです。

もちろん、そもそもトラディショナルとインタラクティブとを区別するのがあまりにも遅れているとおっしゃる方も多いと思います。僕も同感です。しかしそういう人は僕なんかに言われなくてもすでにそういった創作をしているのだと思います。メディアの新旧にとらわれずに、アイデアに従って視聴者に味わってほしい体験を作り出すのに必要なメディアを選べばいいだけのことなんだし。ただ、それを個人の気づきにとどめずに、より大きなエージェンシーや広告という枠組みをシフトさせるためには、今はまだその区別があることをきちんと見つめた上でネクストステップを考えないといけないと思っています。そのために今ワイデン+ケネディNYでいろいろと試行錯誤しているところです。願わくは近々その成果をみなさんにお見せできれば嬉しいなと思っています。

川村真司「世界のクリエーティブ」バックナンバー