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コラム

高広伯彦の“メディアと広告”概論

ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:3

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史上最大のバイラル・マーケティング成功例 ~ hotmail

以前、「Hotmail(ホットメール)」という無料のWebメールサービスがあった(のちにマイクロソフトに買収され、今の同社の「Liveメール」というサービスに引き継がれている)。当時としてはメールサービスそのものが無料であることが画期的だったが、それ以上に画期的だったのが同社が行ったバイラル・マーケティングである。

このバイラル・マーケティングは同サービスの会員獲得のために企(たくら)まれたものであり、結果として非常に短期間の間に数十万のユーザーを獲得することに成功した。これは今でもクチコミマーケティング史上最大の成功例と語られることも多い。じゃあどんな面白いことをやったのかというと、その企み自体は笑えるようなものでもなんでもなかった。しかし今でも史上最大の成功を収めたバイラルマーケティング事例としてあげられる。ではどのようなものだったか。

同社のWebメールサービスの利用者が「hotmail.com」以外のアドレスにメールを送ったときに、そのメールの末尾に「無料のメールアドレスをゲットしよう!http://www.hotmail.com/ 」というような言葉が表示される。たったそれだけ、である。「面白いから」広がったのではない。しかしその伝搬力は爆発的。ユーザーは当然のことながら何人もの友人知人に「普通に」メールを送る。

それは日常的なコミュニケーションとして行われるわけで、このメールを送るという行為自体はプロモーションによって仕掛けられたものではない。またプロモーションのメッセージを送ることをユーザーに促進したわけではない(例えば「お友達に勧めてください」的な)。ただ、ユーザーのコミュニケーション行為の中にちょっとだけ(2~3行程度)おじゃまして hotmail の広告が表示させてもらった、のである。たったそれだけで、ユーザーはhotmail のプロモーションとしてそれらをほとんど意識することもなく、「勝手に」プロモーションが拡散されたわけだ。

さて、クチコミを企む、というとどうしても「どんだけ面白いことやればいいのか」に企画者は思考が行きがちだ。しかしもっと大事なのは、どこにどうやってプロモーションのメッセージを埋め込み、それが拡がっていくのか、を「設計」することにある。面白いことを考える、という「バズ」視点だけではなく、拡がりを考える「バイラル」視点の両方がなければ、クチコミの企みにはならない。この2つの視点が持てると、クチコミの企みの公式、「(シカケ)×(シクミ)」にたどり着くことができる。この公式の説明は次回に。

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