はじめに:“広告的「IP」思考実験”とはなにか
ヒットIPは、なぜ広がり、語られ、愛され続けるのか。
本連載では、広告領域とコンテンツ領域の交点を見つけることを目指しIPが本来持つ可能性を最大限に引き出すための補助線を引いていく連載です。
今回のテーマ:超かぐや姫
プランナー/コピーライターの多々良です。
2026年現在において広がり、語られ、愛される理由が気になる作品といえば、『超かぐや姫』ではないでしょうか。
『超かぐや姫!』。Netflix配信で火がついて劇場公開が決定、20億円を越える興行収入を達成という経歴からも「令和のヒット作品」の風格を感じる方も多いはず。
©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
私の目にも、本作は「新時代」を象徴する作品のように映りました。
売れることが大事なのか? 作家の想いが大事なのか?
手軽さが大事なのか? 深さが大事なのか?
企画を優先するべきか? 表現を優先するべきか?
物語消費が強いのか? データベース消費が強いのか?
IPに関わる人すべてが悩むアンビバレンツに対する解答、こんなことができるのかという神バランス。
『超かぐや姫!』。その新しさは、「しあわせホルモンをデザイン」した点にあるのかもしれない。この記事ではそんな話をしていきたいと思います。
考察1:『超かぐや姫!』は、視覚のドーパミンが切れない
2026年。ヒットの法則を調べれば、「一瞬で伝わる強さ」が叫ばれています。スクロールを止め、シェアやLIKEを生む。最近のタイムラインは、反射を追い求め「恐怖」や「怒り」のような、動物的な反応を揺さぶる表現であふれています。ホルモンで言えば、ドーパミンのクリエイティブ。ちなみにドーパミンは、「やる気」「快楽」「集中力」を生み出す神経伝達物質で、3大・しあわせホルモンの1つです
『超かぐや姫!』は、「ドーパミンが途切れない映画」だったのではないでしょうか。今っぽい華やかさがありつつ、グラデーションは少なく情報量が適切なソリッドなキャラデザイン。彩度は一致するも、一転してリッチな塗りの背景美術。極度に強調された瞳の書き込みと表情演技。アクションの合間に挟まれる絶妙なポージング。次々と投下される記号的なビジュアルアイデア。“ここぞ”で投下される顔アップやパーティクルなどの鉄板演出。
あと、あまり言及がありませんが、本作には邦画的な「間」がほとんどないことも特徴だと思います。情緒的な展開の後半ですら、起伏の強い演技で喋り続けています。
これらが混ざり合い、ショート動画の連続を見ているようなハレの演出になる。『君の名は。』以降でさまざまな作品が試行錯誤した、MV的な演出の劇場への取り込みの究極系とも言えます。もはや曲がかかってない時もずっとMV的です。ストーリーに頼らず、ドーパミンが出るような視覚演出。凄すぎる。
