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コラム

CSR視点で広報を考える

省庁間の発表を翻訳するのはもはやマスコミだけが頼み

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周知徹底が必要な放射能汚染情報に辞書や数学がなぜ必要なのか?

9月30日以来、放射能汚染に関する報道が相次いだ。しかし、相互の関連をしっかりと認識した人はどれだけいただろうか? まず注目したのはこの報道。zakzakの9月30日のWebニュースで、最近、継続して文部科学省が県単位で公表している土壌に蓄積されている放射性セシウムの汚染マップに反応した記事だ。ここでの着目点は、福島エリアから群馬県側と千葉県側に伸びた2つの汚染エリアの帯。これまでの予想をくつがえし、福島、茨城、栃木に加え、群馬の北西部、千葉県北西部、埼玉県南東部及び西部にまで土壌中のセシウムの高い濃度が確認された。高いところで1平方メートル当たり6万~10万ベクレル、放射線量で毎時0.2~0.5マイクロシーベルトと記載されている。

今さらながらに放射能汚染報道となると「ベクレル」と「シーベルト」という言葉に悩まされる人も多いのではないか? 簡単に説明しておくと「ベクレル」は放射性物質が放射線を出す能力を表す単位で、「シーベルト」は放射線による人体への影響度合いを表す単位を意味する。特に人体への影響を考える場合、放射線の種類やエネルギーの大きさ、放射線を受ける身体の部位などを考慮した数値である「シーベルト」で比較することが重要となる。

そこで話を戻すと、9月30日の記事を見て真っ先にチェックしたのは毎時0.2~0.5マイクロシーベルトという数字の高さであった。記事にも記載してあるが、チェルノブイリ原発事故では汚染地域の下限が3万7000ベクレルだったとあり、既に今回文部科学省から発表された県単位での6万~10万ベクレルのエリアを見てもかなりの面積となることは容易に想像できた。では、人体に影響のあるシーベルトの下限をどこにおくのか? そこが次の疑問点となった。
 

プルトニウムやストロンチウムという新たなキーワード

次に注目したのはウォール・ストリート・ジャーナルの10月2日の記事だ。セシウムやヨウ素という言葉に慣れてきた頃、今度はプルトニウムやストロンチウムという聞き慣れない言葉が登場する。セシウムやヨウ素と異なり、プルトニウムやストロンチウムは強力なガンマ線を放出することはなく、そこにあるからすぐ体外被曝するということにはならない。しかし、一方でストロンチウムは骨に、プルトニウムは骨と肺に蓄積される性質があり、呼吸や飲食を通じて体内に取り込まれた場合、がんや白血病になる可能性がある。すなわち、このニュースは、セシウム・ヨウ素における体外被曝に加え、若干ではあるがプルトニウムやストロンチウムによる体内被曝の可能性も示唆したことになるわけだ。

ついにシーベルトの汚染下限が決定

私にとって懸案事項であった点につき、環境省は10日、年1ミリシーベルト以上は除染地域にするという基本方針の骨子案をまとめた、と発表した。

ベクレルやシーベルトだけでも一般人にはかなり理解に抵抗感があるにもかかわらず、今度は「毎時」とか「年」などの記号がついて、さらに意味不明なものとなっていく。行政間での発表での統一感もないので余計、複雑怪奇だ。これらの3つの記事を見て、私はずっと人体の影響度を示すシーベルトにこだわっていた。環境省はシーベルトの下限をどうするのか? その回答が年1ミリシーベルトというものだった。

9月30日の最初の記事で毎時0.2~0.5マイクロシーベルトという記載があったが、これを年換算すると約年1.7~4.3ミリシーベルトとなり、低く見積もっても環境省のいう年1ミリシーベルトを上回ってしまう。汚染マップの状況を見ても「これは大変なことだぞ!」と思っていたところ、まさにその意図を汲んだ記事が掲載された。

それが11日版の朝日新聞Webニュースである。私が直感的に「大変だ」と感じていたことが、具体的な数値、すなわち「8都県で国土の3%に相当する地域が年1ミリシーベルトを超える除染地域」であると記載されたのだ。しかもこの地域には日本を代表する農作物や生乳の産地が集中していることから、除染の対象地域となった場合の今後の日本の食の安全・安心への影響は計り知れない。

各省庁からの発表は分かりにくいまま

9月30日から始まった4つの報道だけでも普通に記事を読んだだけでは深い意味は読み取れない。本来、周知徹底を図るべく発表される重要情報にもかかわらず、各省庁からの発表は、相互の発表の橋渡しをせず、わかりにくいままである。多くの報道機関がその穴を埋めようと努力していることがせめてもの救いだ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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