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コラム

CSR視点で広報を考える

世界レベルの巨大リスクを認識し対処する能力を日本も持つ時期が到来

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巨大リスクの被害算出

9.11同時多発テロが発生してからもうすぐ10年目を迎えようとしている。9月1日付Wall Street Journalはその記事の中で、9.11の同時多発テロ後に米国が負担した費用について分析している。同時多発テロは米国の国防戦略としてアフガニスタンやイラクの戦争につながり、これらの戦争での支出が米国経済に大きな負担を招いたとし、一例として2008年の財政赤字の約40%がこれらの支出であったことを示している。

米国の議会調査部は、2001年9月以降、アフガニスタンとイラクの米軍関係費用として1兆3000億ドルが投じられ、これはベトナム戦争の7380億ドルと比較して約2倍の大きな費用がかかっているとしている。一方で、今年の米国安全保障支出予定額はかなり削減されたといっても約700億ドルあり、同時多発テロ以前の約3倍にあたる金額に相当している。

かつて日本においても、内閣府経済社会総合研究所(2007年4月)で「巨大災害による経済被害をどう見るか」という報告書が提出されており、巨大リスクの被害算出モデルが開示されている。

阪神・淡路大震災では直接損害・間接損害を含めて最大20兆5000億円ほどの被害があったと想定されている(豊田利久・川内朗レポート)。同様に9.11同時多発テロでは、2004年までのHomeland Securityコストの増額分を含めた直接損害・間接損害・増加コストの合計で、最大6620億ドルの被害及びコスト増があったとしている(APEC Economic Outlook)。2005年8月に米国フロリダ半島にカテゴリー5(最大規模)の勢力を維持したまま上陸したハリケーン・カトリーナは、政府、個人資産、企業資産、政府企業等の直接被害に加え、事業損失、実質GDPの減少などの間接被害を含めて最大1925億ドルの被害があったとした(CBO:米国議会予算局)。

今年の8月28日にニューヨークを直撃したハリケーン・アイリーンは最大被害額約70億ドルと算出されており、上記3事例と比べれば極端に小さいように見えるが、前述した米国安全保障支出予定額(2011年度)である700億ドルの10%相当分と考えれば、その被害額の大きさに驚くに違いない。

東日本大震災の被害額

今年6月に発表された内閣府の「東日本大震災における被害額の推計について」によれば、直接損害だけをみても最大約25兆円程度の被害想定が見込まれるが、事業損失やGDPへの影響などを含む間接損害、人の生命損失を含めた場合は、さらに増えて30兆円~35兆円の被害が想定される。しかも、これらの中には仮設住宅の建設や対策費、避難後の病死、凍死、自殺者などの生命損失などは一切含まれていない。

平成22年12月24日閣議決定された「平成23年度の一般会計歳出総額予算案」は92兆4116億円で、歳入額のうちの税収(租税及印紙収入)は5割を大幅に割り込んだ40兆9270億円である。東日本大震災の被害は、国家予算一般会計歳出総額の38%相当にあたり、また国民全体の税収に匹敵する被害があったことになる。

このような数字に置き換えてみると、いかに東日本大震災の被害が大きいものであったかが再認識される。

巨大リスクの被害想定については、戦争、テロ、天災(地震、津波、竜巻、ハリケーン等)などのリスクの関与に伴い、欧米における評価・分析が日本よりも進んでいる。間接損害におけるGDPへの影響に関しても、エネルギー生産、住宅サービス、エネルギー価格上昇、個人消費のマイナスなどのマイナス面や復興投資、政府支出、保険などのプラス面を相殺し、どのような経済的被害が伴うかについて日本政府としてシミュレーションをしておく必要がある。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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