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コラム

CSR視点で広報を考える

東京ゲリラ豪雨やNYを直撃したハリケーン「アイリーン」でも大活躍したツイッターの情報共有能力

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災害情報で急速に進展するSNSの有用性

8月26日午後、ゲリラ豪雨が首都圏を襲った。その直後からツイッターで都内の豪雨の状況や水没の様子を克明に写した写真が投稿(twitpic)され、続々と事態の急変が告げられた。

練馬区の竜巻のような雲、池袋周辺では流水で川のようになり、地下につながるPARCOが水没している様子や、青山エリアの冠水状態、表参道の洪水のような様子、中野駅の雨漏りのような状況まで、都内の被害状況を伝える写真や動画が次々に「速報」として掲載され、生情報としての迫力と迅速な情報提供という機能を十分発揮した。

ハリケーン「アイリーン」から学ぶSNSを通じた新たな危機管理

アメリカ東海岸を北上し、8月28日朝(現地時間)、ニューヨークを190年ぶりに直撃したハリケーン「アイリーン」は、少なくとも9州で20人以上の死者を伴い、物的損害・経済的損失を含めた場合、最大被害総額70億ドル(約5400億円)以上の影響を与えたとされている。

ニューヨーク市長ブルームバーグ氏は、25日以降、何度も記者会見を開き、洪水が起きやすい地域を「ゾーンA」「ゾーンB」「ゾーンC」の3段階に分類し、最も被害が深刻になるとみられる「A」の住民を中心に27日午後5時までに避難するよう命令を出していた。

また、27日正午から地下鉄を全面的に運休し、バスやトラムも運行を休止し、一切の外出を控えるよう呼びかけを行っていた。これらの事態はいずれもニューヨーク市として初めてのことだ。ハリケーン「アイリーン」の特徴は豪雨のみならず風の強さにあるとFEMA(連邦緊急事態管理庁)の専門家達は考え、各自治体の長と連絡を取り合い、これまでにない踏み込んだ事前対策を講じていた。避難命令は各州合わせて230万人に及び、ニューヨーク市だけでも37万人に達した。ニューヨーク市における強制避難命令は同市史上初めての緊急事態であった。

当初、度重なるブルームバーグ市長の緊急記者会見を見た多くの市民がパニック状態となり、ハリケーン「アイリーン」の情報を求めるアクセスの殺到で、ニューヨーク市の公式サイト「NYC.gov」が27日の午前中(現地時間)に一時ダウンした。

しかし、ある程度、状況を把握していた市のスタッフは「特設サイト」を昼までには立ち上げ、ハリケーンの勢力や被害情報などを集約して閲覧できるようにした。このサイトの優れたところは、今回の死者の多数の事故原因となった倒木被害などの情報を市民から直接受け付け、サイトに反映させることができる点にある。

ニューヨーク市は公式ツイッターでも集約した市内の被害状況について逐一ツイートし、28日午後2時にはブルームバーグ市長の「ハリケーンのピークは過ぎた。すぐに復旧対策体制に移る」という言葉もツイッターを通じて行われた。この時点で、同市の6万2000世帯が停電していたが、スマートフォンを通じて多くの市民が、重要な情報をツイッターを通じて理解し、それほど動揺せず、ハリケーンの通過を冷静に対処することができたとしている。

今回のニューヨーク市の一連の動きは、特設サイトを通じて、直接市民から情報を受け付けると同時に、市の公式ツイッターでも被害情報を集約、情報戦略で被害の全容を短期間に把握、分析後直ちに市民にフィードバックを行い、パニックになりかけていた市民の動揺を一瞬で鎮圧させた。

彼らは、市民に警報や注意報を出し、住民に警戒を促すだけではなく、最悪のシミュレーションを想定し、情報戦略をいつでも現実化できるよう事前に準備していたからこそ、今回の対応が可能となったと考えられる。

さらに、その背景にはFEMAによる各自治体への高度な情報交換やアドバイスがあったと想定される。最も天災による影響が大きいとされる日本においても、このような国や行政としての対応を可能とするしくみが早く整備されることを願っている。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー
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