コラム

ローマで働く 駆け出し国連職員の日常

「怒り」のキャンペーン、次なるステップへ

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若年層が対象のポータルサイトを企画

前回のコラムでは怒りをテーマにした飢餓撲滅キャンペーンについて紹介しました。キャンペーンを大々的に展開したのが2010年でしたが、2011年に入ってキャンペーンの「次」のステップを考えようという動きがでてきました。飢餓を撲滅したい、という署名が世界中から集まったのはいいのですが、中には「署名だけでなく、何か具体的に自分にできることはないのか」という声をあげる賛同者もいたのです。また、「どうして21世紀にも入って飢える人がいるのか?」という疑問も寄せられ、キャンペーンチームとしてはせっかく動員した人々の声をもっと効果的に集めて、大規模な運動に展開させるプラットホームの必要性を認識するようになりました。

特に署名活動やFacebookへの書き込みから若者層が積極的に関与していることが見受けられたことから、次のシーズンのキャンペーンは14~25歳ぐらい、高校生や大学生ぐらいの世代をターゲットにしたものにしようと話が盛り上がりました。まだ「アラブの春」などインターネットを使った民主化運動などが芽生える前の話で、先見性のあるアイデアでした。若者にはポップでモダン、エッジの効いたビジュアルが受け入れられやすいということで、専属のイタリア人デザイナーを雇い、EndingHunger.org というポータルサイト立ち上げのプロジェクトがスタートしました。

このサイトは飢餓撲滅のために必要な情報と具体的なアクションのアイデアを若者と共有しようというポータルで、英語、アラビア語、フランス語、イタリア語、スペイン語、中国語とロシア語でコンテンツを提供しています。「Motivate」(動機付けられる)、「Educate」(学ぶ)、「Act」(行動する) 、「Mapping Hunger」(飢餓を地図で見てみる)の4つのコーナーが設けられ、ビデオやインタラクティブマップ、ブログ記事など様々なコンテンツを発信しています。飢餓問題に興味を持った若者がこのサイトを訪問した際に、「あ、フェアトレード商品を買うことによって発展途上国の農家を助けることになるんだ」など様々な発見をしてくれることを願って作られています。

新しいポータルサイトを発表するにあたってスポットCMもあるといいよね、ということでオーストラリア人のアイドル歌手デルタ・ゴッドレムさんを起用したコマーシャルも作りました。デルタさんは前から慈善事業に興味を持っていたということで、快くキャンペーンの応援を引き受けてくれたわけです。「この世界のどこかにもう一人のデルタがいる」というテーマで、世界中の飢えて貧しい人への共感を呼びかけるCMができました。私が赴任した当初は、ちょうどこのCMの日本語字幕作りの最中で、最初の仕事がこの字幕の監修でした。その意味でも思い入れの大きいCMです。


http://www.youtube.com/watch?v=MMdqss7DZXA
日本語字幕付きのキャンペーンCM

飢餓撲滅のためのインターネット放送はじまる

私の仕事のほとんどはこのキャンペーンサイトの運営やコンテンツの管理なのですが、立ち上げから半年近く経ち、ビジターに人気があるのはビデオコンテンツであることが明らかになってきました。「飢餓問題のコミュニケーションには映像やインパクトのあるアニメなどが有効」という声が挙がり、加えて国連組織ですので政治家や有名人がスピーチや表敬訪問にくる機会もたくさんあることから、「せっかくヒラリー・クリントンが下の階の会議場でスピーチをするのだから、そのビデオを流すチャンネルがあったらいいよね」といった提案もでてきました。こうして飢餓問題を扱うインターネットチャンネル「EndingHungerTV」が誕生することになりました。発表は来年に入ってからのようですが、楽しみにしてください。

今後、有名人のインタビューや、飢餓の現場から記者がレポートするようなコンテンツも加わっていくことになっています。国連組織はよく官僚的だ、意思決定に時間がかかる、などと批判されることも多いようですが、このコミュニケーションチームで働いている限り、こうした新しいテクノロジーを使った戦略をばんばん打ち出して、すぐに実行できる現場だな、という印象を受けます。インターネットチャンネルの開設が楽しみです。

次回は少し変わって途上国にルポ旅行、という話をします。

山下 亜仁香「ローマで働く 駆け出し国連職員の日常」バックナンバー

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