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アメリカ人の6割超がハイブリッド車を2度と買わない理由を探る(2)

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前回の『アメリカ人の6割超がハイブリッド車を2度と買わない理由を探る』はこちら

ハイブリッド車は惰性走行時には充電できない?

ハイブリッド車オーナーの6割超が再購入しないというアメリカの調査結果をきっかけに、燃費性能をめぐって、クルマに対する人々の「気持ち」について引続き考えてみたい。

クルマを選ぶ際、便利さや経済性といった合理性はもちろん重要だが、運転そのものの楽しさもあるし、家族や友人とドライブする楽しみなど、感情に訴える魅力も重要な要素だ。

ハイブリッド車に乗って、「クルマに乗って、エネルギーを消費するだけでなく貯めることもできるなんて!」と感動したことがある人は少なくないのではないだろうか。回生ブレーキでエネルギーが回収される仕組みを聞くとそれだけでわくわくする。

ただし、試乗のときに同乗しているディーラーの販売員は、惰性走行(エンジンブレーキ)時には充電が少ないことにはあまり触れないのではないかと思う。多くのドライバーは、ガソリン車で自動車教習を受け、教官から「前方に目配りしてムダにアクセル・ブレーキを踏まないように」と指導されてきている。

一般的な運転免許教習と、ハイブリッド車の性能を活かす運転にはギャップがあるので、ディーラーではそのあたりの情報を強調してほしいものだ。また、そうした特性を知ることで実燃費がカタログ燃費に近くなれば満足度も高まるのではないだろうか。

ハイブリッド車の再購入の意向に関わる経済性について、走行距離から考える

次に、ハイブリッド車の走行距離と燃費経済性について、日本の国土交通省の調査データをもとに、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏の見解を聞いてみたので紹介しよう。

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ハイブリッド車の経済性を考えるときに、非常に重要になるのが走行距離と実燃費だ。なぜなら、車両価格だけでいえばハイブリッド車は割高であるし、年間を通しての維持費で見れば軽自動車という強敵も存在する。ハイブリッド車の利点である燃費の良さでもって「割高な車両価格」「維持費の安い軽自動車」と比べて経済性で上回るためには、距離を稼いで挽回するしかない。

たとえば、普通自動車よりもハイブリッド車が車両価格で50万円を上回っていれば、それを取り戻すためにはどれだけ走らなくてはならないのだろうか? 軽自動車と比較するとどうか? そんな数字を導き出すことのできる統計を見つけた。国土交通省が実施している『「自動車輸送統計」「自動車燃料消費量統計」年報』だ。平成22年度のデータは、全国5000の自動車使用者にアンケートを実施。自家用車からは21日間のデータを提出してもらい統計としたもの。実燃費と走行距離の両方が分かるデータである。

このデータを見ると、ハイブリッド車の実燃費は16.27km/ℓ(カタログ燃費は30km/ℓ~)。1kmあたりの消費燃量は0.06リッターとなる。1日あたりの走行距離は32.84km。年間に換算すると11986.6kmとなる。これをガソリン価格160円/リッターで計算してみると、ハイブリッド車が年間に使う燃料は719.196リッターとなり、金額は11万5071円36銭となる。

hybrid

これに対して、3ナンバーの普通車の場合、年間8391.35kmを走って、1006.962リッターのガソリンを消費すると、その燃料費は年間で16万1113円92銭となる。5ナンバーの小型車は、年間8373.1km走行、753.579リッター消費、12万572円64銭。軽自動車は7745.3km走行の619.624リッター消費の9万9139円84銭となる。

hybrid_表

データを見ると、ハイブリッド車は他よりも走行距離が長く、燃費が最も優れている。しかし、年間の燃料費を計算してみると、その差は驚くほど少ない!3ナンバーの普通車と比較して年間4万6042円56銭安いだけであり、5ナンバー比で5501円28銭安いだけ。軽自動車比になると、逆に1万5931円52銭もハイブリッド車の燃料費が高いことになってしまう。

こんな数字になったのはハイブリッドの年間の走行距離が最も多いからだ。

それでは、他のクルマもハイブリッド車と同様の走行距離を走ったと過程して計算しなおしてみよう。すると、3ナンバー車の燃料消費は1438.392リッターとなりガソリン代は23万142円72銭となる。5ナンバー車は1078.794リッター消費で17万2607円04銭。軽自動車なら958.928リッターで15万3428円48銭。

この年間の燃料費をハイブリッド車の11万5071円36銭と比較すると、3ナンバー車がぴったり2倍。5ナンバー車比では5万7535円68銭ハイブリッド車が安くなり、軽自動車比でハイブリッド車は3万8357円12銭安くなって、ようやく挽回の可能性が見えてくる。かりに50万円、5ナンバー車よりもハイブリッド車が高いとしたら、それを取り戻すのに9年弱かかるという計算だ。ただし、軽自動車比較でいえば、節約できたガソリン代は、軽自動車の税金(自動車税と重量税)の優遇分にも届かない。つまり、同じ距離を走るだけなら軽自動車の方が経済性に優れていることになる。

ちなみに、すべての車両が年間走行距離2万kmで計算すると、3ナンバー車の年間燃料費は38万4000円、5ナンバー車で28万8000円、ハイブリッド車で19万2000円、軽自動車で25万6000円。ハイブリッド車と5ナンバー車の差は年間9万6000円、軽自動車との差は6万4000円となる。車両の割高分はぐっと取り戻しやすくなるのだ。

燃費性能に優れるハイブリッド車ではあるが、同じ車格の普通車よりも高い車両価格を燃料費で取り戻そうとするのは難しい。しかし、年間の走行距離が伸びれば伸びるほど、優れた燃費性能のメリットが生かせるようになる。ハイブリッド車は「無条件で経済性に優れる」ものではなく「使い方によって経済性に優れる」ということが、今回のデータから読み取れる。
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カタログ燃費だけでみると、無条件に優位に感じられるが、実燃費でみると、ハイブリッド車の経済性は「使い方」に左右されることがわかる。

使い方のところは、走行特性(エリアや距離)や運転技術によっても異なることから、ドライバーが独自に判断していると思うが、購入時にそのことをどの程度理解(自覚)しているかどうかはハイブリッド車に対する満足度に大きく影響するのではないだろうか。

たとえば、アクアのようにバカ売れ状態だと、販売の現場では顧客1人ひとりに丁寧に説明している余裕がないかもしれないし、買うほうもそんな説明はいらないから一日も早く納車してほしいと思っているかもしれない。
それに、丁寧な説明をして、その場で顧客が満足したとしても、「次にクルマを買う10年以上先までそのことを覚えているのか」という不確かさもある。

それでも、もし、回生ブレーキに関する理解不足が原因で、高い燃費性能が活かしきれていない、または「やっぱりハイブリッド車は期待外れ」と思われているとしたら、「もったいない」。

次回は、アメリカのドライバーの走行距離のデータを基に、引続きクルマとエコについて考えてみたい。


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