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Pinterestでも人気。ユーザー参加型のモノづくり「ikeahack」とソーシャル・マニュファクチャリング

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ikeaで買った家具を改造しておしゃれにしたり、自分なりに使い易く形を変えたりする「ikeahack」はソーシャル・マニュファクチャリングの好例。設計・製造、販売から分解や資源の回収まで、メーカーと生活者が一緒に取組む仕組みが求められている。

最近、ユーザー数が急増し、楽天が出資を決めたことなどで注目度が高まる写真を中心とした交流サイトPinterest。このサイトに、ikeaで買った家具を改造しておしゃれにしたり、自分なりに使い易く形を変えたりする「ikeahack」が登場した。ikeahackは、ユーザーがメーカーと一緒になってモノづくりに参加する「ソーシャル・マニュファクチャリング」の好例ともいえる。

豊かさを失うことなく、資源の無駄を減らしていく仕組みづくりが求められている。その実現には、つくって売る側から買って使う側への一方通行の物販・物流から、買って使ったものを再資源化する社会の仕組みが必要だ。

その実現を目指し、山際康之・東京造形大教授は、生活者参加型のモノづくり「ソーシャル・マニュファクチャリング」を提唱する。

生活者がモノづくりに参加する「ソーシャル・マニュファクチャリング」

山際 康之 東京造形大学教授


ソーシャル・マニュファクチャリング(social Manufacturing)は、生活者自身が生産やメンテナンス、アップグレード、リサイクルに参加するための製品開発や社会システムである。空洞化した生産と異なり、決して国内からなくなることないリサイクルに基づく資源循環の実現とともに、新しいかたちのモノづくりの定着として、筆者がソニー在籍時代から研究を重ねてきた、その可能性について考えてみる。

集中一方向から分散双方向社会への転換

私たちの日常生活は、モノや情報、サービスの提供を受ける受動的なしくみの社会から、能動的にモノや情報、サービスを創出して、しくみをつくりあげる社会へと転換しようとしています。受動的な社会では階層構造が存在し、上位階層から一方的に供給され、私たちはそれを需要する立場にとどまります。これに対して、能動的な社会では、ある時は供給する立場であり、また、ある時は需要する立場にあります。

このような両側面をもった双方向の社会は、エネルギーを電力会社から家庭に供給する社会から、太陽光発電などの普及により、家庭で発電されて余ったエネルギーを供給すると同時に、足りない時には他から補うエネルギー社会でも見られています。

資源循環型社会においても、あてはめて考えることができます。いままで家庭からでるゴミの処理は、地域の自治体やメーカーなどが集中して行なってきました。すなわち、私たち生活者は排出者であり、自治体やメーカーは処理者という一方通行の流れでした。このため、自治体やメーカーへの負担が大きく偏り、リサイクルの普及はなかなか進みませんでした。また、排出者である生活者もリサイクルへの意識が希薄になりがちでした。

もし、排出者である私たち生活者が、リサイクルの一部に参加し、排出する立場であると同時に処理する立場をかねそなえていたらどうでしょうか。使えなくなった製品を、そのまま棄てしまうのではなく、部品の一部を分解して分別することです。

このように、メーカーが生活者でも簡単に分解できる製品を開発し、私たち生活者が分解などのモノづくりに参加する社会システムが構築できれば、リサイクルの構造は変化していくでしょう。生活者が、リサイクルはもとより、生産、メンテナンス、アップグレードなどのモノづくりに参加することは、いうなれば、「ソーシャル・マニュファクチャリング(Social Manufacturing)」と呼ぶことができます。まさしく、ソーシャル・マニュファクチャリングは、「生活者参加型モノづくり社会」です。


5月30日は、ゴミゼロの語呂合わせから、ゴミ拾いなどの美化運動の記念日とされてきた。

最近では、「スポーツ・競技」として楽しむ「スポーツGOMI拾い」も登場してきたが、環境活動としてのゴミ拾いの発祥は、愛知県豊橋市で1975年に始まった「530(ごみぜろ)運動」といわれている。

1982年には、関東地方知事会の関東地方環境対策推進本部空き缶等問題推進委員会が「関東地方環境美化運動の日(通称「ごみゼロの日」)」を設定し、1993年には厚生省(当時)が制定した「ごみ減量化推進週間」の初日とされるようになった。

その後、環境省の「全国ごみ不法投棄監視ウィーク(5月30日~6月5日)」の初日に設定されるようになり、全国の自治体などで、シンポジウムやキャンペーンが行われるようになった。

不法投棄や廃棄物の最終処分場の不足、そして東日本大震災のがれきの受入れ問題など、広くゴミ問題を考えると、大量生産、大量消費、大量廃棄で成り立つ経済の仕組みを見直すべきことがわかる。

ソーシャル・マニュファクチャリングというコンセプトの推進に、交流サイトPinterestをはじめとするソーシャルメディアが一役買いそうだ。

※詳細は『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)「ソーシャルメディアの本質」特集でお読みいただけます。ご予約はこちらから。

yamagiwa

山際 康之(やまぎわ やすゆき)
東京造形大学教授・大学学校法人理事。東京大学博士( 工学) 取得。ソニー入社後、ウォークマンなどの製品設計などを経て、製品環境グローバルヘッドオフィス部長を務める。現在、東京大学非常勤講師、人工物工学研究センター客員研究員、エコタウンしながわ理事長、そらべあ基金理事などを兼任する。著書は「組立性・分解性設計( 講談社)」、「リサイクルを助ける製品設計入門( 講談社)」、「サステナブルデザイン( 丸善)」など。リサイクル技術開発本多賞、日本生産管理学会賞、環境経営学会学術貢献賞などを受賞。
『人間会議2012年夏号』
『環境会議』『人間会議』は2000年の創刊以来、「社会貢献クラス」を目指すすべての人に役だつ情報発信を行っています。企業が信頼を得るために欠かせないCSRの本質を環境と哲学の二つの視座からわかりやすくお届けします。企業の経営層、環境・CSR部門、経営企画室をはじめ、環境や哲学・倫理に関わる学識者やNGO・NPOといったさまざまな分野で社会貢献を考える方々のコミュニケーション・プラットフォームとなっています。
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