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コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

アウトドアショップのディズニーランド
バスプロ・ショップと日本の新店(東急プラザ、Hikarie)

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米国の流通小売業の売り場で、どこが一番エキサイティングでおもしろいか?と聞かれたら、きっと「バスプロ・ショップ」(Bass ProShops)と答えます。本社はミズーリ州にあり、全米で約60店舗展開。平均約6000坪の売り場面積を持つ広い店内にはありとあらゆるアウトドア商品をそろえています。店内には川が流れ、巨大な水槽があり、熊や鹿やライオンのいる(?)売り場。日本には類似する店舗がなく、ディズニーランドのような体感や楽しさ、驚きを感じることができます。

プレジャー・ボートもあれば、バギーも、丸太小屋まである売り場。

まず、このお店の入り口の写真を見てその全体の大きさをハカってみてください。写真の入り口に立つこの女性スタッフの身長は約180センチ。店頭の最上部までの高さは10メートル以上はありそうです。入口には、テーマ・パークで見られる様な「回転バー」があり、店内に入る際は、アミューズメントな気持が高まります。エントランスの正面には、巨大な水槽が配置され、そこでは水族館のようにたくさんの珍しい魚を観ることができます。また、突き出た岩の上にいる熊や鹿はもちろんはく製ですが、今にも飛びかかったり走り出しそうな臨場感があります。

 

店舗名は「バスプロ・ショップ」でも、釣り具に限らず店内にはアウトドア用品に関するアイテムが全てそろっています。山登り、バーベキュー、ログハウス(組み立てに必要な丸太をセットで販売)、キャンピング関連(テントから始まりキャンピング・カーまで)、ヨットや大型のプレジャーボート、バギーやオフロード・バイクまで。右下の写真のバギーの値段は左から順に、日本円で約80万円・70万円・60万円です。もちろん自動車免許があれば公道で運転することができます。ただし、日本に輸入するには税金が掛かりますが…

また、日本の店舗では絶対に見られない展開として同店が主催する「Gun Event」があります。夏休みや週末を利用して、ライフルやショットガンなど実弾の射撃による「賞金付きのコンテスト」が行われるのは、やはりお国柄です。日本の国土面積の約24倍といったサイズの違いや、その広い土地に立つ店舗スペースでの商品の陳列やリアルなシーンの再現によって、買物客の気持ちをさらに高めるインパクトを感じます。

日本の新しい2つの施設

さて、日本でもこの春、東京・表参道と渋谷に2つの大型商業施設がオープンしました。ひとつは、4月18日にオープンした東急プラザ表参道原宿。“「ここでしか」「ここだから」をカタチに”というコンセプトの下、日本のファッション・カルチャーシーンからの初出店や新業態をそろえた全27店舗で構成されています。出店した店舗の他に注目したのは、広さ約250坪の屋上テラス「おもはらの森」。すり鉢状の広場になっていて、その周りでくつろげるようにたくさんのベンチや日よけが設置されています。あたりには8種類の樹木が植えられ明治神宮の森や表参道の緑と合わさって、都会の真新しいビルと自然をつなぐ、そんな役割を果たしている場所です。

 

もうひとつは、かってプラネタリウムや映画館等で構成されていた東急文化会館が生まれ変わった渋谷ヒカリエ。「渋谷から未来を照らし、世の中を変える光になる」というビジョンを持って名付けられた渋谷の新しいランドマーク。地下4階から地上34階建ての複合タワーには、東急百貨店の商業施設「ShinQs(シンクス)」、大型ホールの「ヒカリエホール」、クリエイティブ・フロア「クリエイティブ8」そして日本最大級の劇場「東急シアターオーブ」が集積。

施設全体で目を引いたものに、多箇所で展開されるデジタル・サイネージがありました。以前、米国のGMSを中心にしたデジタル・サイネージについて紹介しました(第2回コラム)。サイネージの運営については、施設や広告やコンテンツのあり方をトータルに考えないと難しい点、そして売り場での展開の場合「ショッパー・インサイト」や「買い物行動」を捉える必要があること。

「渋谷ヒカリエ」の館内に設置された「次世代型館内案内システム」は、買い物客が画面に直接タッチして自分が欲しい情報(店舗や商品、サービス内容)を得ることができます。このシステムは顔認識や非接触リーダライタを搭載し、機能拡張によって今後はさらに多様なサービスの対応が可能とのこと。まさに未来に向けてのサービスです。

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最大直径約17メートルの円形の大型LEDディスプレイ

 
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施設の案内情報を表示する46インチのタッチパネルによるシステム

海外と日本のリテールにおける共通点

海外と日本の商業施設や店舗を捉える際に、ベースとなる<土地の面積>や<商圏>の違いといったものがあります。徒歩や仕事の帰りに買い物をするのと、週末車で移動して食品や生活用品をまとめて買うのでは、買い物客の行動やお店に求めるサービス等が異なります。

でも、買い物に来られたお客さんに「またこのお店に来てみよう」とか「今度は誰かと来よう」と思ってもらうための価値や発見のポイントがどこにあるのか。これが商業施設・店舗における課題(それを行うことで新たな機会や売り上げづくり)であることは両者に〈共通する点〉です。

日米においては、商業施設・店舗の広さや距離やアクセスという物理的な条件が異なる中でも、この「気分やエモーションをどう作るか?」また、少子高齢化やスマートフォンなどの携帯端末によりネットが今以上に普及していく環境や社会の中で、リアルとネットのメリットを融合した(デジタルの活用も含めた)取組やプロモーション、そして買物をするお客さんとのコミュニティをどう築いて行くかが、今最も重要なテーマになっています。

次回は、米国の流通小売業の活動を観ながら「O2O(オンライン・ツー・オフライン)を
2つの視点でハカる。
」リテールとメーカーそれぞれの立場から捉えます。

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー