コラム

中国で広告一筋7年目

大学では学べないMCBA

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万里の長城

今は中国の地方都市のクライアントさんの工場でこのコラムを書いています。ここは上海から飛行機で2時間。中国は広いです。たまに日本の友達から、「来週上海出張になったんだけど、万里の長城連れってくれるかな?!」みたいな素っ頓狂なメールも来たりします。相手がカワイイ日本人女性の場合は「まさか1泊2日のアバンチュールに俺を誘っているのか・・・」などとドキドキしてしまいますが、これまでは全て相手が地理に弱いだけでした。グスン。

さて気を取り直して。昔は、会社の中でもちょっと残念な人が島流し的に駐在員で送られてきていたと言われるチャイナですが、最近は違います。各メーカーにとっても大事な市場になりつつあるこの国には、近頃は海外の大学院に留学してMBAをとって総経理(社長)で赴任、といったように会社の中でも一線級のエースが送られてきています。ただしそういった人たちでも苦戦するのがチャイナ。こんなものMBAでは習ってないぞ! みたいなケースがとても多いのです。今回は、そんなM“C”BAのケースに出てくるようなチャイナビジネス話です。もうお分かりだと思いますが、MCBAは、Master of “China” Business Administrationの略なのです。

地方都市に本社を置く飲料メーカーで起きた話なのですが、その会社は中国の軍には、特別価格で商品を卸しています。これは政治的な目的もあるし、軍隊が導入してくれていれば、他でも営業しやすい、という狙いもあります。ここまでは普通の話ですが、どうも社内を調べてみると軍隊からの受注がありえないくらい多い。しかも、軍隊からの発注なのに、届け先は重松商店とかなっている。これはオカシイぞ、と軍隊の購買担当に面談を申し込むと、軍隊の人は忙しいフリをしてまったく会ってくれない。そのうちに、重松商店担当の自社営業マンの出勤車が、メルセデス・ベンツに。

M“C”BA的には、このケーススタディの正解は、「自社の営業」が「軍隊」から受注したということにして、安い値段で社内を通し、それを「重松商店」に売る。「自社営業担当」、「軍隊購買担当」、「重松商店担当」の3人がグルになって全員が私腹を肥やし合っていたのです。こんな悲惨で悪質なケースはMBAのケースにはきっとないでしょう(あったらスミマセン)。

他にも、もし私がM“C”BAのケーススタディ本を作ったとしたら、載せたい事例を下記します。

●監視カメラの目的を、外部からの泥棒対策から、社員の行動を監視するため、と変更。実際の取付け位置・角度などを再調整。なんと悲しいことに、商品の盗難が激減してしまった。

●コンビニで飲料にベタ付キャンペーンをやったものの、売り上げが全然上がらなかった。調べてみたら景品は、コンビニのレジの店員に全て先に盗られていた。

中国ローカル系コンビニ

●化粧品メーカーさんがテレビCMのぶら下がりで、Webから申し込んだら全員にサンプル無料プレゼントを実施。結果、新疆ウイグル地区(中国の奥地)から信じられないくらい大量の申し込みが。サンプルは渡さざるを得なかったのですが、最終的にはそれらの大部分が淘宝網(楽天のようなECサイト)で売られまくってしまった。

もともと、中国に進出してくる日系メーカーのご担当の方は、一人で何役もしなくてはいけません。工場の機械が壊れた、製品の認可が下りない、放射能の影響で日本から原材料の輸入が止まった、部下の車が急にベンツになった、軍隊の担当者が会ってくれない・・・ビックリするくらいの超大手メーカーさんでも、1人とか2人駐在員日本人が、ある商品のマーケティング全てをみているという状況がとても多いです。

この7年間で様々なクライアントさんにお会いしてきましたが、ただでさえ過酷なこの状況で、本当に成果を出せるのは、知らず知らずのうちにM“C”BAをマスターしていそうな、パワフルな方々のような気がするのです。

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