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コラム

中国で広告一筋7年目

信頼獲得に成功した中国版SOYJOYのプロモーション

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さて、今回は具体的に読広大広(上海)広告有限公司がどんなお仕事をさせていただいているかを、弊社で立ち上げから現在も担当させていただいている維維飲料食品有限公司の維維嚼益嚼(この会社に日本の大塚製薬が出資。SOYJOYの中国バージョン。ニセモノではないです!)の事例を参考にご説明したいと思います。

SOYJOYパッケージ

維維嚼益嚼(SOYJOY)のパッケージ

中国では未だに食への不信が根強く残っています。今年の3月には、年配の方が毎日摂取することが良いとされていた超有名な健康食品に大量の鉛が入っていたというニュースがありましたし、卵の黄身がゴムボールのように硬い鶏の卵や、薬のカプセルが靴工場で作られていたというニュースもありました。大豆ではなく髪の毛から作られた醤油工場の摘発ニュースを聞いても全く驚かないですし、下水から食用油を精製している地溝油というのも中国人なら全員知っています。つい先日は、日本でも有名な蒙牛というブランドの牛乳には、牛の小便が混ざっている、というニュースも巷を賑わせました。

「髪の毛から醤油」画像(百度検索へリンク)です。勇気のある方はどうぞ…

なので、中国人にとって何かよくわからないお菓子は怪しまれ、信用を勝ち取らないと売れない。以前書かせていただいたように、中国の媒体費(テレビCMや雑誌広告の単価)は日本と同じかそれ以上と、とても高いのですが、ローカル企業や外資系企業は、大量の資金をバックに、有名タレントを起用したり、テレビCMを大量に出稿したりして、「こんなに広告をする企業の商品だから安心ですよ」と伝える手法で戦っています。中国の消費者は、知らない商品をまずは疑って掛かります。好奇心で試してみても、失敗するリスクが日本に比べてはるかに高いので、特に体に入れるもの、化粧品などは、認知⇒人気を得るというよりは、認知⇒安心、でやっと購入に繋がる傾向があります。

2009年、中国でローンチする維維嚼益嚼には大きな課題がありました。それは、日本のSOYJOYに比べて広告宣伝費が圧倒的に少ないこと。日本でやっていたように超有名人を使って「そこダイズなトコ」みたいな面白いCMを大量に出稿する、といった戦略を取ることが出来なかったのです。

そこで、クライアントと私達は、中国消費者の下記の2つの特徴に目を付けました。

  1. 維維嚼益嚼のターゲットとして設定した25~35歳の女性は、テレビCMではなく、テレビ番組内で紹介された&有名人が実際に使っている、みたいな触れ込みには日本人よりもとても弱い。上記のような安全の判子が押されたらハードルがグッと下がり、使ってみようと思う。
  2. ターゲットは、テレビよりもWebが圧倒的に大好き。

予算に限りがあった維維嚼益嚼プロモーションについて、私達が取った手法は下記です。

  1. とにかくできるだけ多くのテレビ番組とタイアップして番組内で出演者の口で紹介してもらう。商品を、テレビ番組がオススメしている感満載にする。
  2.  ↓
  3. Webサイトにて、ターゲットが参加したくなるような遊び心たっぷりのインタラクティブなキャンペーンを実施。例えば自分の顔写真をアップロードして、そこで可愛いデコレーションができる上に、なんと自分の静止画が生きているように動き出す、みたいなテクノロジーも使いました(モーションポートレート)。
  4.  ↓
  5. Webサイトには、大量のテレビ番組とのタイアップ実績を掲載し、消費者が遊びに訪れた時に「テレビ番組でたくさん紹介されるくらい安心の健康お菓子」と思わせる。

SOYJOYのテレビ番組タイアップがこちらから見られます。

SOYJOY陳列

主に使った番組は美丽俏佳人という全国番組で、これは日本で言う「王様のブランチ」のような番組です。他にも北京ローカル番組、上海ローカル番組、湖南衛星などたくさんの番組とタイアップしました。この作戦は見事に当たって、限られた予算のなか、市場導入から順調に売り上げを伸ばすことに成功し、2010年には日経ビジネスの中国ヒット商品ランキングにもノミネートしていただきました。

私は、日本の製品は総じて本当にモノが良いと思います。ただしマーケティングは戦争です。武器を潤沢に持っていない日本企業は、それを消費者に伝える術が敵より少ないのです。その場合は、ゲリラ戦で勝つしかない。日本ではリーダーやヒーローでも、残念ながら中国では市場の端役かもしれない、と一度冷静になってみていただきたいのです。

SOYJOYはヨーロッパでもローンチしているのですが、是非プロモーションの参考にしたいとおっしゃっていただき、マーケティングを担当しているイタリア人やフランス人、ドイツ人にもこの手法のプレゼンテーションをさせて頂きました。僕は中国語の方が圧倒的に得意なので、頑張って英語を喋ろうとするものの、イタリア人に「トゥーハンドレット」と言いたいトコロを「リャンハンドレット」と言ってしまう有様。こういう機会があるたびに英語も勉強しようと強く誓うのでした。

第6回「仁義なき中国での弊社営業手法」はこちら

重松 俊範「中国で広告一筋7年目」バックナンバー