もしも自分がクライアントだったら

これまで10回、小僧のくせに偉そうに色々書いてすみませんでした。その都度書きたいことを書いていたので、残り2回になった今回は、僕の想いをなるべくまとめてみたいと思います。「もし僕が中国でクライアントになったらどうするか(主に広告)」、という設定が一番書きやすいかな、と思ったので、それを具体的に書いてみたいと思います。

総合広告代理店の人間が何てことを言うんだおい…という感じかもしれませんが、もし中国で自分がクライアントになって広告計画を考えるとしたら、僕が従事するのがどんな業界、どんなターゲットだとしても、まずは絶対にインターネットを主軸に置いてプランを考えます(入れ歯洗浄剤とか完全に老人向け商品は除きます)。

今の中国のインターネットの影響力は、本当にスゴイくて、日本人が思っているより中国人の生活にネットは入り込んでいます。また逆に言うと、ネットが生活に入り込んでいるような比較的新しいものを受け入れる土壌がある中国人こそが、日系企業の商品のターゲットになりえると思います。

中国では、ほぼすべての日系企業が、同じ業界で競合する企業よりも少ない広告予算で戦っています。例えば弊社クライアントで言えば、日本でスポーツ飲料のリーダーであるPOCARI SWEATは、中国ではローカル系の脈動、アメリカのゲーターレードと比べて、とても少ない広告予算で奮闘しています。

これまでに何度か、中国の媒体費は高い! と書いたのですが、実はインターネットはそれに比べてまだまだ安い。日本ではバナー広告をクリック課金で出稿する場合、CPC(コスト・パー・クリック=クリック単価)は100円くらいが相場ですが、中国では結構な大手サイトでも15円程度です。検索エンジン広告(リスティング)では、例えば食用油というキーワードの入札は、50円(日本ヤフー)vs23円(中国百度)。インターネットは、まだ少し日本より割安感があります。
 
某日系の食用油のクライアント。競合は金龍魚とか福臨門などという中国ではとても歴史のある巨大ローカル企業で、その2社ともものすごい出稿量でテレビCMや屋外広告をやっているのですが、彼らは現状で全くといっていいほどインターネットプロモーションにお金を使っていない。

食用油のターゲットは当然主婦。主婦はネットやらない、という思い込みではなく、ネットをやる主婦だけをターゲットにしたらよいと思います。10人の主婦全員に買ってもらうことを目指しているのではなく、まずは10人に1人買ってもらえればいいのですから。

実は、中国企業はネットを上手く使えている企業とそうじゃない企業に明確に二分化されます。中国では、歴史がある会社になればなるほど、社員のITリテラシーがあまりに低くてネットを使えていません。

某日系企業が合弁している由緒正しいローカル企業は上海から飛行機で40分の地方都市にあるのですが、クライアントの中国人が田舎者のオッサンで、デスクにPCがないかわりに、靴を履いたまま足を机に投げ出して仕事している、というくらいITリテラシーが低く、結局彼の意見だけを聞くと、いつもテレビCMと屋外広告しかやらない、というプランになってしまいます。本当にインターネットに疎い。既存の広告媒体に出稿すればそれぞれの媒体社の担当者から色々メリット(賄賂)を享受出来るのに、ただでさえ彼らにとってわからないネット広告に切り替えることはまず無いですよね。

ただ、逆にローカル企業にはネットをとても上手に使いこなしている会社もあります。これらは上記のような歴史のある会社と真逆で、ITリテラシーが高い人ばかりを採用し、ボス自体もネットに強いのだと思います。

もし僕がクライアントだったらネット中心にプランを考える、と言いましたが、とは言っても簡単にネットエージェンシーに丸投げで発注したりはしません。なぜなら、現状ではネットエージェンシーはネットのプロではありますが、広告やコミュニケーションのプロではありません。まずは真摯にターゲットの中国人を理解し、コミュニケーションの核を定め、ネットを上手く活用出来るインテグレーテッドなプランを考えることに注力します。

例えば洋服屋さんのプロモーションだったら、店舗に大きな画面を設置して、そこに色々な洋服を試着した自分の写真を6枚並列で並べることが出来る。その6枚の写真をすぐに微博で友達にシェアできて、他の商品を見ている間に、友達からすぐにコメントをもらう。中国人はネット上でもリアルと同じでお喋りなので、レスは日本人のフェイスブックよりも早く付きます。そして、友達のコメントで一番好評だった洋服をお買い上げ、みたいなストーリーが描ければいいと思います。

日本でもこのキャンペーンはアパレル店舗で実施されていますが、僕は中国人の方がネット上でお喋りですし、写真を撮ることに抵抗もないですし、中国でやるほうが日本でやるより向いていると思います(ちなみにこれ、上海仲間の会社様と組んで本当に実現できますので、ご興味があればぜひお声がけください!)。

余談になりますが、現状ではネットエージェンシーだけではこういう企画はなかなか考えられないかもしれませんが、近い将来、僕達の競合はネットエージェンシーになるんだろうなぁと思います。ネットエージェンシーがアイデアやブランディングノウハウを持つようになるのが早いか、既存の広告会社のネットリテラシーが格段に高くなるのが早いかの勝負だと思います。

ここで、もし自分がクライアントだったらぜひこういうことをやりたいな、と思う中国の過去のキャンペーンをいくつか紹介いたします。どのアイデアも、これまで何度も申し上げてきましたように高い媒体費を使わなくても話題になるような、アイデアを中心にしたキャンペーンです。どれも弊社の事例ではありませんが、いつかこういうキャンペーンを弊社でもやりたいと思っています!

リプトン紅茶プロモーション

これは2、3年前なので中国のスピード感からするとかなり昔の事例なのですが、Webサイト上で紅茶を送りたい友達の住所を入力すると、本当にその友達にリプトンが紅茶を届けてあげる、というキャンペーン。中国の媒体費は高いので、完全に一切媒体を使わずにリアルとネットのクチコミパワーだけでやり遂げたキャンペーンです。実際僕の会社にも何回も紅茶が届きました。

SUPOR(キッチン用品) 焦げ付かない鍋

動画をご覧頂ければ説明不要だと思いますが、焦げ付きにくい鍋というコンセプトのイベントです。インターネットやTVニュースでとても話題になりました。

アリエール 中国16都市 ゲームキャンペーン

中国の田舎は、とても娯楽が少ない。アリエールは、イベント会場に巨大なTシャツを用意。Wiiのリモコンを使って、アリエールとケチャップなどの調味料の瓶を作りました。それらで中国人が汚したりキレイにしたりをし続けるというシンプルなゲーム形式のイベントなのですが、中国の田舎では、テレビCMを打つよりも、こういうものがウケルだろうなぁと思います。

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重松 俊範(読広大広(上海)広告有限公司副社長兼クリエイティブディレクター)
重松 俊範(読広大広(上海)広告有限公司副社長兼クリエイティブディレクター)

1978 年生まれ。2001年中央大学法学部卒業後、読売広告社に入社。営業・プランニングの部署を経て2005年に中国に赴任。中国語を勉強しHSK9級(通訳初級レベル)を取得。大広(広州)でOJTを経た後、07年読売広告社の海外拠点である“読広大広(上海)広告有限公司”を、大広と合弁で設立。現在は副社長兼クリエイティブディレクター。

読広大広(上海)広告有限公司は2012年5月現在社員数約30人。 クリエイティブとWebを絡めたプロモーションを武器に、日系大手メーカーを中心に現在も鋭意業務拡大中。

facebook : http://www.facebook.com/Shige.Shanghai
twitter : @Shige_Shanghai

重松 俊範(読広大広(上海)広告有限公司副社長兼クリエイティブディレクター)

1978 年生まれ。2001年中央大学法学部卒業後、読売広告社に入社。営業・プランニングの部署を経て2005年に中国に赴任。中国語を勉強しHSK9級(通訳初級レベル)を取得。大広(広州)でOJTを経た後、07年読売広告社の海外拠点である“読広大広(上海)広告有限公司”を、大広と合弁で設立。現在は副社長兼クリエイティブディレクター。

読広大広(上海)広告有限公司は2012年5月現在社員数約30人。 クリエイティブとWebを絡めたプロモーションを武器に、日系大手メーカーを中心に現在も鋭意業務拡大中。

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