2008年北京オリンピックの花火の演出で知られる蔡国強氏が来日し、23日、アウディフォーラム(東京・渋谷区)で浅田彰氏とともにトークショーを行った。蔡氏はこのほど、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞、中国国籍では初の受賞となる。受賞を記念して行われたこのトークショーには古くからの支援者や多くのファンが詰めかけた。
蔡国強氏は、火薬を爆発させて、キャンパスや壁面、空中、水辺などさまざまな場所にアート作品をつくりだす火薬のアーティスト。そのダイナミックな作品は、世界中の人々を魅了し続けている。
蔡氏は、日本との関わりの深いアーティストとしても知られている。上海演劇大学で舞台美術を学んだ後、自由な活動の場を求め、1986年から日本に滞在。筑波大総合造形研究生として河口龍夫の研究室に所属。1988年から1995年の間は福島県いわき市を中心に地元の人々と交流しながら芸術活動を行った。そのため、古くから交流のあるいわき市の人々は蔡氏は「いわきのアーティスト」と言う。
火薬と導火線を使った「万里の長城を1万メートル延長するプロジェクト」(1993)など話題作を次々に発表し、1995年以降はニューヨークを拠点に世界中でその土地の人々とともに作品をつくりあげる活動を続けている。
トークショーでは、蔡氏は、ロシアやデンマーク、カタール、アメリカといった世界各地で地元の人々と一緒につくりあげた作品を紹介。そのなかで、「異文化との対話からたくさんのエネルギーをもらって作品にしあげる」「アートはその土地の人に楽しんでもらうものでなければならない」「違う文化のなかで作品を受け入れてもらうには、ちょっとしたテクニックも必要」などと、ユーモアを交えながら語った。
また、領土問題で日中が緊張関係にあることについて、自身が異文化のなかで、ときには文化的なタブーにも踏み込んで作品を仕上げていく経験を元に次のように語った。
「違う文化に受け入れてもらうときには、いつもチャレンジがあります。ときには、展示会が全部だめになってしまうリスクもある。でも、そういうものを乗り越えないと作品にパワーが生まれない」(蔡氏)
翌25日から蔡氏は「10万本の桜のプロジェクト」に参加するためにいわき市を訪問。そのもようは、『人間会議』2012年冬号でレポートする。
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