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フィリップ・コトラー教授、10年ぶりに来日

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イノベーションが日本を成長させる

続く「イノベーションが日本を成長させる」では、ネスレの高岡氏、ローソンの新浪氏とイノベーションを起こしてきた日本企業のトップが参加してのディスカッションが行われた。モデレーターを務めたドミニク・テュルパン学長から「コトラー氏が提示した、成長のための8つの戦略の中でも特に重視することは?」と問われ、高岡氏は「強力なブランド、イノベーション」、新浪氏は「イノベーション」を重視していると回答。さらに各社の具体的戦略についてコトラー教授からの質問に答えていった。
 
新浪氏は「社長に就任した後、20代男性が中心だったコンビニ市場の中で女性と高齢者という新たなターゲットに焦点を絞った事業展開をし、それがローソンにとってのイノベーションになった」と説明。さらに「アマゾンのような企業は、ローソンにとっても脅威。O2Oをはじめとした戦略を実施するのも、オンラインでコミュニケーションをしたお客様に店舗まで足を運んでいただき、店舗での体験をしていただくことが、アマゾンのような競合企業との差別化戦略上、大切と考えているから」と話した。

またコトラー教授に「スーパーマーケットのテスコは、顧客の中でもワインが好きな人を集めたり、小さな子供を持つお母さんを集めたり、顧客同士のコミュニケーションの場を作っている。ローソンでそうした戦略は考えていないか」と問われた新浪氏は「日本のコンビニはデジタルになりすぎている。リピートしてくれるお客様を増やすためにも、店舗の店員他、お客様同士のコミュニケーションの場になるような店づくりができたらよい」と話した。さらに、ブランドに必要なのは社会をどう変えたいか、その理念や志というコトラー教授の話を受け「企業としてだけでなく各店舗ごとに、それぞれの地域における社会に対する使命のようなものができたらよい」とも話した。

一方の高岡氏は「ネスレはこれまで流通・小売りを経由して商品を販売してきたが、バリスタのビジネスは消費者に直接販売するビジネスモデル。ダイレクトビジネスと小売り経由で販売するビジネスモデルが共存できるのか、見定めようとしている。しかしダイレクトビジネスで、これまでわからなかったお客様の属性が把握できるようになったことは魅力的」と話し、事業モデルのイノベーションで創出した事業で、企業とお客さまの間に新たな関係が生まれてきた状況について説明。インターネットの登場により大きく変わった顧客とのダイレクトな関係をいかに活用していくか、またそうした環境におけるコーポレートブランドの役割についても、言及した。

カンファレンス全体を通じ、「ブランドの力が弱まっている時代において、ブランドには改めて自分たちが社会に対して、何を提供する存在かを理解し発信することが必要」「リスクを恐れがちな日本企業において、いかにイノベーションを起こす社内風土をつくるか」「企業が独自に考えていてもなかなかイノベーションを起こすようなアイデアは生み出せない。カスタマーの声を聞き、彼らのインサイトを徹底的に知ることが大事」といったテーマが出てきた。

今回のカンファレンスの主催者であるネスレは今から100年前。大正時代にはすでに日本市場に進出をしていたことになる。低成長の時代、日本企業はいかに海外に進出をすべきか、も大きなテーマ。ユニ・チャーム、ローソンの事例から、すでに多国籍化している欧米企業、新興国に登場している新たな多国籍企業とは異なる日本企業ならではの独自戦略の必要性も見えてきた。

written by sendenkaigi