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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

なぜ国内1店舗だった洗車用品店が、数年で8ヵ国300店舗を超えたのか?

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この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。

(1) お客さんからの「たまごち(魂のごちそう)」が理念を進化させる

ネットショップを真摯にやっていると、あるとき、お客さんから「ありがとう」のメールなどが届き、思わずうるっときたり、ガッツポーズをしたくなる気持ちになることがあります。私たちはその「お客さんからのありがとう」を「魂のごちそう」、略して「たまごち」と呼んでいます。

「あなたのお店(商品)のおかげでこんなハッピーがあった」というような「たまごち」をたくさんもらえるようになると、あるとき、「もしかして自分たちは世の中のこんな問題を解決していることになるのではないか」と気づく瞬間が訪れることがあります。「たまごち」が理念を進化させるのです。そのあたりのストーリーをつづったショートムービーがあります。相原さん本人が制作したものです(スライドショーみたいな、素朴な作りです)。

(2) 本物の理念は「自己犠牲的利他」ではなく「自己中心的利他」から生まれる

「もっと売上を伸ばしたい」とか「お金持ちになっていい車に乗りたい」という利己的な考えは「理念」になりません。かといって、自己を犠牲にして他人を利する「自己犠牲的利他」の姿勢は、本人がつらそうだったりして、結局、まわりにハッピーな気分を与えられないことが多いように思います。逆に、自分のやりたいことを夢中でやっているうちに、まわりの人から「ありがとう」と言われるようになるのが理想的です。これを「自己中心的利他」と呼んでいます。

(3)海外展開は「外国へ戦いに行くこと」ではない

相原さんは、理念が明確になった効果として「関係する方々すべてとの立ち位置が変わった」と言います。関係者とは、お客さん、取引先、外注先、スタッフ、代理店などすべてを含みます。その関係性が、「売り買いという経済活動の相手」から「パートナー」に変わったということです。相原さんが語る海外展開のスタンスは、次のようなものです。

「『洗車の王国』の海外展開とは、私たちの実現したい未来に対して夢を共有できるパートナー(SENSYA Family)探しです。よく聞くような、海外進出、海外戦略とは違い、外国に戦いに行くイメージはまったくありません。洗車業は、非常にローカルな仕事であり、生活習慣や商習慣、文化に密接に関わっています。私たち自らが洗車業を外国で行なう場合、その文化の勉強から始めなければなりません。そもそも、私たちのミッションは、洗車の王国の考え方(SENSYA Culture)を広めていくことですので、その国で広めるミッションは、その国の文化を熟知している現地のパートナーに委ねることが近道です。商品を売ること、売上を伸ばすことは後からついてくると考えているので問題ありません」。

「グローバル競争」という考え方とは対極のスタンスだからこそ、「友人から聞いたんだが、私も SENSYA Family に入れてほしい」というオファーが絶えないのです。

※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。