同じセンスを持つ人が緩やかに集う「街」
コミュニティの中でもFacebookやTwitterはリアルの世界で例えると、学校や飲み屋になるのかもしれません。親しい人たちが、「昨日何食べた」「あのテレビはどうだった」「天気はどうだ」などメジャーなトピックついて、割合深く話す場になっています。会社の喫煙室などもこれに近いでしょう。
では、その場所が購買を行う場として機能しているかを考えると、そうではないだろう、と。例えば青山学院大学にH&Mが出店したとして、ターゲット(女子大生)、場所(青山)ともブランドにぴったりあっていますが、おそらく彼女たちは講義のあとにそこで買い物をしてくれるかというと、してくれないはずです。その場所においては、学食でマズいご飯を食べながらぺちゃくちゃ話している方が楽しいのは明白でしょう。
では、購買をする場はどこなのか。それが街なのです。で、街とは何なのかと考えると、同じようなセンスを持った人たちが自主的かつ「緩やかに」集まっている場所です。たとえばあの人、時々すれ違うけれどいつもオシャレな服を着ているなぁとか、ショップスタッフのお姉さん、名前は知らないんだけどなんだか話が合うんだよなぁ、とか。学校の友達と行くにしても、クラスの仲いい子であれば誰でもいいということはなく、その中でも同じものをみたときに似たような感覚を持てる子といきたいなぁと思うのが自然です。そしてその感覚にお店が共感して出店し、そこに人が共感して街に出てきて、またお店が出てきて……。この雪だるまが大きくなったとき、街になっていくのです。
街というコミュニティは非常にパワーを持っていて、その場所にその感覚を持っている人たちが集まっているという理由だけで、いろいろなことが起こります。高級ブランドは、まず第一に銀座か表参道に出店したいと考えますし、秋葉原のようなコミュニティとしての発展を見せる場合もあります。海外の観光客も財布を抱えて繰り出す先は、まずお目当ての街です。ひとつの都市の中にこれだけたくさんの街があるこの規模の大都市は世界でみても東京だけでしょうし、その構造は非常にインターネット的ともいえるでしょう。
とはいえインターネット上にはこの動きというのはまだしっかりとした形では存在していません。ZOZOTOWNもTOWNと名前がついてはいるものの、お店が並んで出ていて「お客さんいらっしゃい!」というパルコやルミネに近い商業施設モデルですし(それはそれですごいモデルですが)、PinterestやTumblrなどいわゆるインタレストグラフと呼ばれるネットワークをつくっているSNSは何らかの形でこの雪だるまの構造をウェブ上で作ろうとしています。我々Sumallyもこの流れを作るべく、日々サービスに向き合っているのです。
さて、3カ月に渡ってのこの連載も今回が最終回になりました。広告業界にも少し関わり、雑誌編集者を経てウェブサービスを立ち上げた、というそこそこ珍しいキャリアで得た経験を文章化するというこのコラムは僕にとっても貴重な機会となりました。全6回のコラム、おつきあいくださった皆様ありがとうございました。感想等々、お聞かせいただければ幸いです。また、これを機会にSumallyもぜひ使ってみていただけると非常にありがたいです。
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