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コラム

「経営のとなりにあるデザイン」〜デザイナーに何をさせるべきか〜

ナガオカケンメイさんに見る「越境で得られるデザイナーの仕事力」

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ナガオカケンメイさんというデザイナーがいます。著名なデザイナーですが、「デザイン実業家」とも言える人です。ご存知のとおり、ナガオカさんは、D&DEPARTMENTというブランドを経営されています。

このD&DEPARTMENTは、ロングライフデザインを有する日本の工芸品等を扱うセレクトショップです。ロングライフデザインの商品とは、長い年月変わらないデザイン価値を持ち続ける商品で、決して流行を追うデザインではありません。

では、流行のデザインを扱うショップと、ロングライフデザインを扱うショップでは何が違うのでしょうか。流行を追ったデザインの商品は、「トレンドのデザインを価値」としているので、その時は大量に売れるかもしれませんが、やがて下火になります。経営者は事業を持続するために、商品を回転し続けなければなりません。

一方でロングライフデザインの商品を扱うショップは、「変わることのないデザインを価値」としているので、デザイン鮮度は下がることがなく、商品を回転させる必要がありません。よって仕入れる度に商品数が増えていきます。つまり前者はフロー型ビジネス、後者はストック型ビジネスと言えます。

後者の業態は、新商品を仕入れ続けるための経費や、旬を過ぎた商品の在庫リスクから距離をおく、持続可能性の高い業態でもあります。この様な業態に着目したナガオカさんは、発想からしてデザイナーの枠を超えていると思います。

デザイナーであれば「自分がデザインした商品を売りたい」、または「独自でデザイン性の高い商品を売りたい」と思うのが普通ではないでしょうか。しかしD&DEPARTMENTは、新しいデザインを生み出すのではなく、変わらないデザイン価値を見極め、発掘し、普及するという事業です。それを高いレベルの作り手である著名デザイナーが事業にしているという逆説的な文脈が非常にユニークで独自性にあふれています。

さらに、ナガオカさんの周りには、ロングライフデザインを普及するというビジョンに共感した社員や仲間が集まってきます。D&DEPARTMENTは暖簾分けをして店舗の地方進出を行っていますが、ビジョンに共感した地方のオーナーがブランドを崩すことなく地域に根ざした店舗運営を実現しているので、ブランド側としてはコストをかけることなく直営同等のブランドショップ展開を可能にしています。

ビジョンを共有した仲間と事業を推進していくことは小さな企業なら比較的簡易ですが、それを高いレベルで維持しながら拡大しています。こんなナガオカさんだからこそ、デザイン専業デザイナーでは解決できない企業課題もたくさん解決できそうです。ナガオカさんに、様々な事業課題も含めて相談したいと思う経営者は多いのではないでしょうか。

様々な経験から得た多角的視野を持ったデザイナーになることは、経営者がパートナーとして求めているデザイナーに近づいていくことだと思います。そのためにデザイナーは越境を恐れず、新しい経験を蓄積していくべきではないでしょうか。