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『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』刊行記念特別対談② 谷山雅計×福里真一「企画に向いているタイプとは?」(1)

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人気者ほど最初につまづく!?

谷山:実は学生時代に人気者だった人のほうが、こういう仕事に就いてから悩むことが多いような気がします。昔、僕の下に「大学時代、サークルの中心人物でした!」みたいな奴がついたことがあったんですが、そいつが「学生時代には何を言っても、みんなが笑ってくれたのに、この会社に入ったら、出す案すべてをけちょんけちょんに貶される…」と悩んでいて。その時に話したのが「学生時代はお前自身の“人柄”が皆から愛されていたんだ。でも広告の企画というものは、考えた人間から離れ、企画だけが判断されるものなんだ」ということでした。「電信柱タイプ」はそういうギャップを味わうことがない分、いいのかもしれないですよ。

福里:わかります。少なくとも自分自身よりは、自分が考えた企画が人気者になる可能性の方が高いですからね。

谷山:僕の場合は、「電信柱タイプ」ではなかったかもしれないけれど、でも勉強ができたので、周囲から優等生と思われていたところがありました。「僕の方が面白いことを言える!」と思っているのに、おちゃらけた子の言うギャグのほうが、受けたりするのを歯がゆく思ったり。

福里:不思議なことに普段、面白いことを言う人が、企画するとつまらなかったり、その逆も多いですよね、誰のこととは言いませんが…。自分で自分のことを決めつけないほうがいいですよね。
ただ、僕がこの本を一番読んでほしいと思っている、自分のことを「電信柱の陰タイプ」と思っている人が、はたしてこの本を手に取ってくれるのか、ちょっと微妙ではありますよね。「あっ、嫌なものを目にしてしまった…」と目を伏せてしまうんじゃないか、と。

谷山:でもタイトル、キャッチーでいいですよ。僕の『広告コピーってこう書くんだ!読本』は、最後までタイトルを決めきれなくて悩んだんですが。

「最高新人賞」が悪影響

谷山:本の中に、電通に入社してからずっとうまくいっていなかったという話が出てきますよね。TCCの最高新人賞をとってからも、まだうまくいっていない感じがしてたって。端から見ていたら新人賞をとった時、華々しい登場感がありましたよ。

福里:それは、遠くから見ていたからだと思いますよ。電通社内ではまったく相手にされていませんでしたから。カタログハウス「通販生活」のテレビCMで、最高新人賞をとったのですが、結構くせの強いCMだったので、「暗くて、感じの悪い奴だと思っていたら、案の定、暗くて感じの悪いCMをつくった」という感じの受け止められ方で…。なんというか、みんなの僕に対する印象が確信に変わった、と言いますか。

谷山:世の中でも話題になりましたよね。

1997年に福里さんは最高新人賞を受賞した(1997年のTCC年鑑より)。

福里:でも、この新人賞が悪影響を与えたんです。人が「もういやだ、こんな生活!」と叫ぶような、不幸なシーンを描くCMで評価されたので、「これが僕の性格を活かした作風だ!」と思ってしまって、その後、そういう暗い作風のCMを企画し続けたんです。しかも、当時の上司から「クライアントとは戦わなければいけない!」みたいなことを言われていたので、そういう企画を無理やり通そうとして…。ですから、そこからまた3年ぐらいはまったくうまくいきませんでしたね。

谷山:確かに。「通販生活」は今の福里さんのCMと雰囲気が違いますよね。

福里:僕にとっては30歳になって、まず自分には才能がないと決めたこと。そして、佐々木(宏)さんとの出会いが大きかったです。佐々木さんと出会って、ことごとく企画を否定されるという経験をし、でもなんとなく佐々木さんの言っていることもわかるな、と。それを応用して、初めてうまくいったのが「明日があるさ」でした。とにかく、この時は自分の作風とかではなく、クライアントに望まれていることを、その通りに企画しようとしたんです。そのあたりのことも、この本には、くわしく書いてありますので。

谷山:佐々木さんの中では、いつの間にか「明日があるさ」も自分の仕事のようになってそうですが(笑)。

福里:ええ。でも、当時から佐々木さんは「BOSS」のCDだったので、ライバルだったんですけどね。「明日があるさ」が「ジョージア」のCM曲になってしまったことで、「カラオケで歌えなくなった」と佐々木さんからはさんざん文句を言われました(笑)。

(次回に続く)

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福里真一(ふくさと・しんいち)ワンスカイ CMプランナー・コピーライター
1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。いままでに1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」など。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを、数多くつくりだしている。



【連載】「電信柱の陰から見てるタイプの企画術」――福里真一
1、はじめに
2、第1回「電信柱の陰からおずおずと語りはじめる」
3、第2回「幼稚園では藤棚の柱の陰だった」
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(1)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(2)
特別対談「企画術は本当に役立つのか?」(3)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(1) ー こちらの記事です。
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(2)
特別対談「企画に向いているタイプとは?」(3)