境:谷口さんはコンテンツをつくるという行為をビジネス化しようとする強い意志がありますよね。過去に仲畑さん、糸井さんが広告を変えたように、ネットから新しい広告とコンテンツの関係が育っていったらいいなと思います。
本当は広告があるからこそ、コンテンツが楽しめるのだけど、今の広告とコンテンツが分断している状況はよく考えれば不自然なことかもしれませんね。
埼玉テレビで北海道テレビの藤村忠寿さん、読売テレビの西田二郎さんという二人の人気プロデューサーが出演する「たまたま」という番組があるのですが、この番組は「予算ゼロ」を標榜して始まったんです。
予算がないので最初は二人がカメラの前に出てきて、ひたすら話すだけ。で、その後、番組内でスタッフ、スポンサーの募集が始まって。熊谷の八木橋百貨店という企業がスポンサーに名乗りをあげ、次の会からテロップが出せるようになったり(笑)。スポンサーがいるからコンテンツが楽しめるのだということを視聴者にも理解してもらえている番組で面白いな、と。
谷口:面白いですね。その図式は、“今っぽい”ですね。ニコニコ動画などでも、趣味でゲーム実況をしていたユーザーに、後からスポンサーが付く場合があります。
境:メディアが力を持ちすぎて、広告自体のコンテンツとしての魅力を考える視座が薄れてしまったのかもしれません。広告にコンテンツとしての力があれば、メディアの力に左右されずに、ソーシャル上で拡散することもあるわけですし。
広告にメディアのリーチ力を基準とするものとは違う指標が必要とされているのかもしれませんね。
――――ありがとうございました。
コピーライター/クリエイティブディレクター/メディア戦略家 境 治氏
1962年福岡市生まれ。東京大学文学部を卒業後、1987年、広告代理店I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターとなる。1992年、日本テレビ巨人戦中継”劇空間プロ野球”の新聞広告「巨人を観ずに、めしが食えるか。」でTCC(Tokyo Copywriters Club)新人賞を受賞。翌年独立し、フリーランスとしてCM・ポスターなどの制作に携わり、TOYOTA、JR、日立製作所、フジテレビなど多方面のスポンサーを担当してきた。2006年、長年つきあっていたロボットの経営企画室長に任じられ、プロダクション経営の制度再構築を担う。2011年からはビデオプロモーションでコミュニケーションデザイン室長。2013年7月から、再びフリーランスに。
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