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明暗分かれるも実態は?ビジネス誌の大学ランキングとの付き合い方

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ビジネス誌などで定期的に組まれる大学ランキング特集は、大学にとって頭の痛い存在だが、世間からの注目度も高く避けては通れない厳しい”制裁”。ランキングにどう向き合うべきか、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に聞いた。

「広報会議」2014年1月号紙面より抜粋

ビジネス週刊誌と大学教職員の関係は「ツンデレ」である。「ツンデレ」とは、おたく用語で「普段はツンと澄ました態度で、陰ではデレデレといちゃつく」程度の意味である。大学教職員はビジネス週刊誌などの大学特集について「また似たような話ばかり」「取材が浅くてつまらない」と文句を言いつつ、必ず目を通している。大学教職員は「いちゃついているわけでも好きなわけでもない」と反論するであろう。

見て見ぬふりはできない大学ランキング。計算方法によっていくらでも変わるのも恐いところだ。

しかし、はた目には、その偏愛ぶりは「ツンデレ」としか言いようがない。大学特集の中でも、もっともいちゃつく、もとい、気にするのが「ランキング」である。

ランキングは就職率、学生数などの大学にまつわる各データを並べたものだ。読者からすれば、抽象表現でなくデータなので客観性があると考える。また、データがあると分かりやすいため、大学特集記事の大半はランキングも合わせて掲載している。

大学は2011年から情報公開が義務化されており、ビジネス誌はランキングを作りやすいという事情もある。一方で、大学教職員からは「データ一人歩き被害者論」がよく出る。要するに、データだけが一方的に流布した結果、「ランキング下位の大学は損をする、それは風評被害ではないか」というものだ。

就職率なども計算方法によっていくらでも変わるし、学部のくくり方でも変わる。

例えば文系学部でまとめた場合、社会福祉系学部や国立・教員養成系学部が上位にくる。専門職業に特化した学部の就職状況は良くて当たり前である。それから「面倒見の良さなどデータには出ない」と不満をこぼす大学教職員も多い。確かにその通りだ。

ならば、そこは大学がそれぞれ工夫をしてデータとデータでは見えざる部分、両方を大学サイトなどで提示していくべきだ。

たとえば、就職支援なら、職員数・応対可能時間や行事予定だけ提示しておしまい、という大学が多い。相談対応をしているなら、主な質問とその回答を公開するだけでも印象は大きく変わるはずだ。

国家資格試験の合格率が低いなら、なぜ低かったのか、担当者の分析や次年度以降の改善計画を載せればよい。言い訳との批判も出るだろうが、何もないより前向きな姿勢を示せる。

奨学金にいたっては、受験生とその保護者がかつてないほど注目している現代においても、データすら公開していない大学が実に多い。「詳細は××にお問い合わせください」の一文が読み手は「連絡なんてするか!」ととらえていることに気づいていないのは鈍感な証拠である。

ランキングは大学教職員がどう嘆いても、切っても切れぬ腐れ縁。ならばそういうものだとあきらめて、うまく付き合う方が賢いはずだ。


大学ジャーナリスト 石渡 嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年札幌生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年より現職。主な著書に『アホ大学のバカ学生』『就活のバカヤロー』(共著、光文社新書)など。