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「もう1人の社長であれ」警察広報官主役の小説『64』の作者・横山秀夫さんが語る広報の矜持

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「小手先広報」は見透かされる

横山さんに今の広報について聞くと、「警察と企業とでは役割や業務はかなり違いますが」と前置きしたうえで、「今の広報は危機的状況にあると感じます」との答えが返ってきた。一般的に上手な仕掛けと思われるものほど、見ていてその送り手に対する不信感が募るという。

「コマーシャルにしても、さまざまなタイアップにしても、仕掛けた人やマスメディアの人たちによる『お祭り騒ぎ』を見せられているような気持ちになります。目先の利く人が考えるのでしょうが、そうしたマスコミの特権意識と二人三脚の仕掛けは消費者によって見透かされていることにまず気付くべきです」。

警察や行政の広報にもいる八方美人型の広報対応についても手厳しい。一見「話せる広報」として、マスコミに協力してくれるような姿勢を示すが、「相手によって微妙な差異をつけていくことで『八方美人』は成立します。実は公平ではないから、大きな問題が起こった時に呆気なく関係が崩壊してしまう」と指摘する。「小手先広報がいい広報として喧伝されているように思えてなりません」。

仮に素晴らしい宣伝文句を並べて商品が売れたとしても、使ってみて期待を裏切られたと思ったら商品や企業から離れていく。そして消費者は、企業らによる「楽屋落ち」を冷ややかに見るようになったと横山さん。

「目先の評判や利益を求めるのではなく、しっかり構築したものを広報する姿勢でないと、もはや信頼されない時代です。『策士』みたいな人が最も広報に向いていないと思います」。

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