前回のコラム「彼女は何と何と何と何でできているのか」はこちら
「普遍」「絶対」に立ち向かった2人の天才
スタンリー・キューブリックには駄作が1本もない。理由は彼自身が明かしている。
「駄作は自分で捨てる。公開しない。」
ずるい。
そして、うらやましい。

『恐怖と欲望』(1953年)にも、キューブリック各作品に特徴的な“狂気じみた上目づかい演出”を見ることができる。<写真はTurner Classic Movies - Movie Clip “ Don't Tell The General!” から>
キューブリックのその方針は没後も守られてきたが、ながらく封印されていた『恐怖と欲望』(“Fear and Desire”)が、日本では2013年に初めて公開された。監督4作目にあたる。
本人が「素人の仕事」と切って捨てた映画だけに、あれほどの監督の失敗作とはどんなものなのか期待(?)したのだが、なんのことはない。明らかに普通ではない立ち位置を持つ監督による映画だった。
いちばん印象的で、その後の傑作群を暗示しているのは、『恐怖と欲望』というタイトル。『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』などを思い浮かべれば、テーマ自体はこの頃から存在していたことになる。
残念ながら、あの類まれなサウンドトラック構築力などはほとんど感じられない(『博士の異常な愛情――』のラストシーンにおける、あの音楽のあて方はもはや教科書になっている)。けれど、ソリッドな文体と暴力的知性/ユーモアは、すでに姿を現している。
この映画の冒頭ナレーションで、キューブリックはこんなことを書いている。
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古川 裕也(電通 CDC局長 / エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)
古川 裕也(電通 CDC局長 / エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)
古川裕也(ふるかわ・ゆうや)電通 コミュニケーション・デザイン・センター局長、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。クリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌライオンズ28回、D&AD、One Show、アドフェスト・グランプリ、広告電通賞(テレビ、ベストキャンペーン賞)、ACCグランプリ、ギャラクシー賞グランプリ、メディア芸術祭など受賞多数。カンヌライオンズ、D&AD、クリオなど、国内外の審査員・講演多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム・アンド・インテグレーテッド部門の審査員を務めた。
主な仕事:九州新幹線全線開業「祝!九州」。中央酪農会議「牛乳に相談だ」。JCB「買い物は世界を救う」。リクルート「すべての人生がすばらしい」など。
古川 裕也(電通 CDC局長 / エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)
古川裕也(ふるかわ・ゆうや)電通 コミュニケーション・デザイン・センター局長、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。クリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌライオンズ28回、D&AD、One Show、アドフェスト・グランプリ、広告電通賞(テレビ、ベストキャンペーン賞)、ACCグランプリ、ギャラクシー賞グランプリ、メディア芸術祭など受賞多数。カンヌライオンズ、D&AD、クリオなど、国内外の審査員・講演多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム・アンド・インテグレーテッド部門の審査員を務めた。
主な仕事:九州新幹線全線開業「祝!九州」。中央酪農会議「牛乳に相談だ」。JCB「買い物は世界を救う」。リクルート「すべての人生がすばらしい」など。
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