フォーカスを絞ってブランドを変える。

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大切なのは、テクノロジーではなく、その使いかた

世の中が効率ばかりを求める世界とは、世の中に1種類しかシャンプーがない世界です。最も単価が安く、機能が平均的に良くて無駄なパッケージはなく、全国民が等しく手に入れられる超効率的シャンプー。

しかし実際の世の中には、たくさんのシャンプーがあり、多くのブランドが存在しています。そしてほとんどの業界では、製品の機能が飽和しています。だからこそ、デザインやブランド、空気感といった要素が、ユーザーを味方につける上で大切なのです。多くの企業がユーザーに振り向いてもらうためにさまざまなブランド施策を投下しています。

そんなブランドを作り上げるための広告やクリエイティブが集まるのが、年に1度フランスのカンヌで開催される「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」です。

世界中の精鋭クリエイターをはじめ、テクノロジー企業やメディア、ジャーナリストが1万2000人以上集まるこの祭典には、97カ国から3万7400作品が寄せられます。参加者たちもブランドや広告について朝から晩まで語り尽くす、まさに“お祭り”です。

カンヌライオンズで重視されるのは「いかに世界を変えたか」「どう人の心を動かすか」という点。人の本質に食い込み、新しい感情や表現、ブランドを作り上げたものが評価されます。テクノロジーとしての新しさよりも、その技術を活用するアイデアの新しさのほうに重きを置くようになっています。

たとえばファレル・ウィリアムズのシングル「Happy」のプロモーション。

24時間におよぶミュージックビデオを用意し、アクセスした人の現地時間に合わせて内容が変わるWebサイトを立ち上げました。ファレル本人や素人、カメオ出演する著名人らが、ロサンゼルス各所を歩きながら「Happy」を口ずさむ演出はわかりやすく、それをマネしたビデオが世界中で誕生しました。難しい技術ではなく、だれでもマネできて心が動くフレームをつくったこと、そしてそれが正しく伝播したことが評価され、見事サイバー部門のグランプリを受賞しました。

手前みそではありますがヤフーの「さわれる検索」もPR部門とデザイン部門でシルバーをW受賞しました。

このプロモーションでも僕らは、「3Dプリンター」でもなく「音声検索」でもなく、「どういった体験をつくるのか」を徹底することに気をつけました。

検索に「さわれる」という機能がつけば、それは未来のインターネットであり、未知の体験であり、盲学校の生徒さんの教材に使えるのではないか。そういったシンプルな発想を貫き通したところに価値があり、そうやってネットの未来を示すことこそがヤフーのブランドへと通じると考えたのです。

これは多くのブランドに言えることですが、強いブランドはとにかく1つの場面にフォーカスしています。「Happy」のように「バイラルを生みだすユーザーの楽しさ」、なのか「ネットの未来」なのか。

焦点を絞れば絞るほど強いブランドがつくれる。そう信じてヤフーはさまざまな物事をフォーカスすることに力を入れているのです。

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内田 伸哉(ヤフー/ブランドマネージャー)
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