「そこまで東京を目の敵にせんでもええ」「本当に東京に『ケンカを売る』なら支持。東京に住んどったこともある現徳島県民より」–。徳島県が9日、県のプロモーションや各事業の共通コンセプト「VS東京(ブイエス東京)」を発表し、PR動画を公開すると、ソーシャルメディア上では、県民から賛同やとまどい、さまざまな声があがった。
なぜ、徳島県は「対東京の構図」をつくったのか。
「我々地方自治体は、危機にさらされている。県の個性を生かした、新たな価値を生み出すことが急務だ。『VS東京』は、そのための基準となる」と、9日の記者発表で飯泉嘉門知事は強調した。「東京一極集中状態を打破する上で、『東京には敵わない』という考えではだめ。これまで自治体は自虐的過ぎた」。
徳島の魅力を都市生活者にアピールするためには、誰もが納得できる価値を伝えることが必要で、しかもその価値は、東京にないものであるべき–共通コンセプト策定の背景には、そんな思いがある。コンセプトシートにも、「『VS』と銘打っていることを意識し、きちんと“勝ち”を得られるものを見つけ、勝負を挑むこと。(中略)何が凄いのか、どこが凄いのか、それが人の、あるいは社会にとってどんな価値があるのかをきちんと考えて、学んで伝えて行くこと」と記されている。
「普通は、強いメッセージが生まれても、検討する間に角が取れていく。しかし、誰もキズつけないが、誰にも届かない言葉を重ねても仕方がない」と、コンセプト策定に参画したドローイングアンドマニュアル代表の菱川氏は言う。「VS東京と掲げることで、東京に住む人に振り向いてほしいという意図もある。敏感でクレバーな方々から、反応があるはずだ」。4月から、庁内の各部署から集めた20~40歳代の県職員14人と共に、議論を重ねてきた。東京との対決姿勢を示すアイデアは、策定の初期段階からあったという。
一過性のキャンペーンコピーではなく、「共通コンセプト」と位置づけたのもポイントだ。「東京にはないものをどう提供していくか。今回のコンセプトは、県庁各事業の明確な基準となる」と話すのは、県の総合政策課発信戦略担当リーダーを務める加藤貴弘氏。コンセプトの効果については、「PRを進めながら、企業の誘致数や東京からの移住者数の増減、首都圏への農産物販売数などで成果を見ていきたい」とした。
すでに成果が出始めている施策もある。全県下に光ファイバー網を整備し、山間部でもWi-Fiが利用できたり、古民家でもインターネットが使えるようにした結果、東京の企業20社ほどがサテライト・オフィスを徳島県に開設した。
来年度から施行に向け、今回のコンセプトでふるいにかけられた施策が今年末までに審議されていく。2015年度以降どのような成果を収められるか、長い戦いとなる。
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