「既存の視聴率とは共存していく」——テレビ視聴データに参入したスイッチ・メディア・ラボの福羽泰紀社長に聞く

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メディアリサーチ会社のスイッチ・メディア・ラボは6日、テレビ視聴データの分析サービスを10月に提供開始すると発表した。調査対象世帯のテレビに視聴データの測定装置を取り付け、テレビ番組やCMの視聴状況データをインターネット経由で収集する。当面は関東1都6県の地上波デジタル放送7局が対象。パネル数は1650世帯4000人でスタートし、年内に2000世帯5000人に拡充する。
テレビ視聴データをめぐっては、ビデオリサーチの視聴率が業界のスタンダードとして存在している。2000年に米ニールセンが日本での視聴率調査から撤退して以来の新規参入となる。
スイッチ・メディア・ラボは2012年10月に設立され、2013年7月にネットリサーチ最大手マクロミルの創業メンバーでもある福羽泰紀氏が社長に就いた。福羽社長に参入の狙いとサービスの特徴について聞いた。

——テレビ視聴分析サービスに参入しようと考えたのはなぜか。

スイッチ・メディア・ラボ 福羽泰紀社長

現在のテレビ視聴率は広告取引における重要な指標となっているが、出稿枠の選定などプランニングに活用する際、データのあり方に必ずしも満足しているわけではないとの声が聞かれていた。その状況に突破口を開けられるのではないかと考えたのがきっかけだ。

例えば個人視聴率でF1層(女性20歳~34歳)がある番組をどれだけ見ているかがわかるが、多くの広告主はもっと明確なターゲティング基準を持っている。富裕層であったり、年間複数回以上海外旅行に行っている層が視聴者の中にどれほど含まれているのか。また、毎回その番組を見ている人が多いのか、入れ替わりが激しいのかといったことがわかればマーケティングの戦略立案に役立つはず。こうしたプランニングに使える視聴データを収集し、提供するのが狙いだ。

——どのようにデータを収集しているか。

独自に開発した測定機器を対象世帯に配布し、家庭用のリモコンから発信される赤外線の信号を機器が受信することでデータを収集している。視聴者個人の識別のために、リモコンの色ボタンの中からその人を識別するためのボタンをあらかじめ決めておき、リモコン操作の際最初に押してもらう。色ボタンを押さないとチャンネルが切り替えられないようにしている。データの提供は当面は地デジを対象にしているが、BSもCSも同じ仕組みで収集している。

個人の識別は現在、世帯で4人まで対応しているが、近いうちに6人まで対応させる。すると世帯の99.5%をカバーできる。測定機器にはWi-Fi(ワイファイ)の通信機能があり、リアルタイムでデータが送られてくる。時間帯別の視聴データは15分後には反映され、番組の視聴データは終了後2~3時間後に反映される。

調査サンプルはマクロミルが持つ100万人超のパネルから抽出した。居住地や性別、年齢構成などの比率は総務省のデータに近似するようにして構成を決めた。パネルには当社の会員になってもらい、ネット調査で職業や家族構成、趣味・嗜好などについて聞いている。

——既存の視聴率と比較してのセールスポイントは。

細かい属性ごとに視聴分析ができることと、リアルタイムに数値を把握できることだ。既存の視聴率は翌日に発表されるが、すぐに数字が見られるので、毎日の帯番組で放送後に反省会を行う際などでも参照することができる。

——ビデオリサーチの視聴率は関東地区で600世帯を対象にしている。2000世帯が適正と考える理由は。

細かな属性ごとに数値を見ようとした場合、1区分ごとのサンプル数が50程度では少ない。最低でも150~200あるのが望ましいと考えると、全体として2000世帯は必要と判断した。現在の視聴率は、F1、F2といった区分がサンプル数を確保するのに精いっぱいなのではないか。

——サービスの利用料金は。

年間契約で月額50万円から。放送局向けに毎分の視聴状況を提供するサービスや、広告主向けのCM視聴状況などは別途オプションとなる。元データを自社で加工したいといった要望にも対応する。

——想定顧客は。既存の視聴率サービスからの乗り換えを狙うのか。

ビデオリサーチの視聴率からの乗り換えは想定していない。現在の視聴率は広告枠の「取引通貨」となっており、我々が狙うのはそこではない。あくまでプランニング精度を上げるためのデータの提供が目的で、立ち位置が違うと認識している。

特に、テレビに出稿している広告主には可能性があると感じている。広告会社経由でデータを入手しているところが多いと思うが、大手や外資系企業などを中心にメディアプランニングの精度を上げたいとの声が聞かれる。そこには市場に広がりがあると考えている。

——コスト面の負担は重くないのか。

機器の開発やサンプル世帯への謝礼など、ベンチャーが行う事業としてはそれなりのコスト負担が必要なのは確か。ただ、クラウドやWi-Fiなど最新の技術を使うことでそれなりの費用に抑えることができた。5年前なら同じようにはできなかっただろう。


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