【前回のコラム】「「リーダーは強い意志を持ち、ディテールをあきらめないことが重要」——アバナード 安間社長に聞く」はこちら
このコラムでは、企業のトップに対して、人材育成について考えていることや実践していることを聞いていく。その中で、「マーケティング思考ができて、なおかつ実際に行動に移すことができる人材」を育成するにはどうすればいいのかを探っていきたい。
今回は、34年間に渡り消費者と企業をマーケティングで結びつけてきた老舗企業、ドゥ・ハウスの代表取締役社長 稲垣 佳伸氏に聞いた。
「人材育成」ではなく「自ら気づいて育っていくもの」
——貴社が社員に対して“求めている力”とは、どのようなものでしょうか?
最初に誤解を恐れずに言うと、私は「人を育てる」という言葉が好きではありません。「人が人を育てる」というのはおこがましいのではないかと思うんですよ。「人を育成する」「意識改革」などと簡単に言いますが、結局のところ「人は機会によってのみ自ら成長する」というのが基本スタンスです。
——「機会によってのみで成長する」ということは、つまりその機会をなるべく公平に皆さんに与えるということですか?
そうですね。「機会を与える」というのが基本方針です。リクルートの創業者・江副氏の言葉にもありますよね。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」。あれは良い言葉です。また、企業理念の中でもできるだけ「会社」と言う言葉を使わないようにしています。「事業資源」「事業理念」「事業ビジョン」「事業戦略」としています。会社を「事業」に置き換えて表現しています。というのも、会社はただのハコに過ぎなくて、いつ消えてもおかしくないからなんです。
——その基本理念が貴社の業務にも反映されているんですね。
そうですね。私が学生のころの経済学に「生産とは労働と土地と資本であるから……」という一文があったのですが、それを全部読み替えています。労働→人の知恵に、土地→ネットワークに、資本→データと置き換えて考えています。全体としてはこんな絵で表現されるのです。生産者がいて、消費者がいて、マーケットがある。今から250年ぐらい前に産業革命が起こって、消費者が食べきれないほどの生産が生まれた。それで「どうしたらもっと売れるのか」ということでマーケティングが始まった。私たちは「今日の消費者は実は生産者だ」と考えています。情報経済社会では、消費者こそが生産者で、企業は、実は、消費者なんです。
「企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方」バックナンバー
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