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IoTがもたらすコミュニケーション革命〜情報が人を思いやる時代〜

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東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は日本にとって大きな転換点となる。2020年を節目とし、未来の日本をどうデザインするべきか?アサツー ディ・ケイ(ADK)と宣伝会議は10月17日、虎ノ門ヒルズにて、生活者の変化とその予測から未来を構想する特別フォーラムを開催。各界で活躍する特別ゲストや、全部で10の重要業界をカバーする、ADKの専門家集団「カテゴリーチーム」による示唆に富んだセッションが行われた。

登壇者

  • 松原 隆利(ADK iLab主宰)
  • 大山 晋(医療カテゴリーチームリーダー)
  • 戒田 好範(ココロと飲みもの研究所所長)
  • 神尾 寿(ITジャーナリスト)

あらゆるモノがつながる社会

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「コミュニケーション未来2020」の午後の部では、ADKの10のカテゴリーチームがそれぞれの知見を活かした未来予測に基づく、セッションが開催された。トップバッターは「医療」「IT」「飲料」のチームが集結し、「IoTがもたらすコミュニケーション革命〜情報が人を思いやる時代〜」をテーマにディスカッションを行った。

2007年のiPhone発売を機にスマートフォンが普及し、いつでも、どこでもインターネットにつながる環境となった。さらに2020年には、スマートフォンだけでなく、家電や身近なものがインターネットとつながるようになるIoT(Internet of things)の時代が現実化している。

インターネットがより身近になった未来にはどのような変化が起こるのか、そのような時代をどう読んでいくべきか。セッションはこのテーマに軸足を置いて進んでいった。

キーノートを務めた神尾氏は販売、普及台数のデータをもとに、スマートフォンがパソコンに代わり「身近なコンピューティングデバイス」となったと話した。

今後、さらに端末価格が下がると世界中の人がスマートフォンを手にし、Eコマースや動画、電子書籍などを楽しむデバイスがスマートフォンに集約されていくスマホセントリックス時代が到来すると予測。世界中の人がスマートフォンを持ち、常にインターネットにつながる時代には「人々の行動や社会のあり方が変わってくる。そういった認識でこれからの5年、2020年以降を見ていかなければならない」とまとめた。

さらに、imodeの生みの親でもある夏野剛氏がインタビュー映像で登場。IOTが広がることで、今のスマートフォンを介してインターネットに接続している状況から、より直接的に、「人間の知性そのものがインターネットにつながるようになる」と話し、「より高次元に人間が進化する、その過程に我々は生きている」と、その可能性を示唆した。

IoTで生まれる3つの変化

本セッションでは、IoTが与える変化を示すキーワードとして「ライフステージ」、「ライフスタイル」、「ライフマインド」の3つが提示された。

キーワードの一つ目、「ライフステージ」については松原氏が解説。これまでは、女性が結婚し、子供ができれば家庭に入り主婦となる、あるいは、定年を迎えると隠居するように、年齢を軸として人生を区分けする考え方が主流となっていた。

IOTによって自動車の自動運転やロボット技術を活用することで、肉体ではなく知性をベースにした活動を実現し、年齢や生活環境によって労働の現場から離れることなく、参加し続けることが可能になる。

IoT技術が発達することで「超高齢化国家と言われる日本を、世界に誇る幸せ社会のひとつのモデルにできるのではないか」との仮説を立てた。

ライフステージが年齢で規定できなくなると、ライフスタイルはどう変わるのか。

大山氏は医療カテゴリーチームの立場から、ICTによって「日常と医療行為がつながるような動きが出てくる」と指摘し、ウェアラブル端末の登場で、その動きはさらに加速すると予測した。

健康維持に必要な食事、運動、休息は、人間の価値観やパフォーマンスを決定する要因でもあるととらえ、IoT技術で日々の行動や健康状態を24時間可視化することを組み合わせれば、人のライフスタイルに合わせたマーケティングを実現することができるだろうと話した。

行動が24時間可視化され、効率的に運動や食事、休息を求められることは機械による人間の管理を想起させる。こうした状況で注目されるのが第3のキーワードとなる「ライフマインド」だと話をつないだ。

コピー不可の体験に欲求が生まれる

IoT技術の発達によって人々の行動履歴や体調がネットワークに乗ってデータベース化されると、人が何かを求める前にその欲求を判別できるようになる。

戒田氏は「そうして蓄積された情報が、人々の生活に応じたマインドを汲み取り、慮ってくれることを“ライフマインドコミュニケーション”と呼べるのではないかと考えました」と話した。

そして、この情報が最適化されていくと、究極的にパーソナライズされた「コピー不可の体験」に対する欲求が生まれると予測。IOTにより情報が管理され、効率化が進んだ先にこそ、人間の持つ肉体的な弱さや、心の渇きに注目し、日々変化する人のライフマインドに応じた体験を提供するものが必要になると話した。

「人をマーケティングのターゲットとしてではなく、常に変化する1人の人間として情報技術側が思いやり、人間的なコミュニケーションができていくのではないか」とIoTが進んだ時代のコミュニケーションの展望を話し、ADKカテゴリーチームの結論として紹介した。