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コラム

「ヴィレッジヴァンガードに学ぶお店づくり~こんなんだってあり~」

ヴィレヴァン「逆理」の仕入れ術~無理でしょ、いや無理じゃない

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【前回コラム】「ヴィレヴァンの「屋台の焼きそば理論」 猥雑で活気に満ちた空間づくり」はこちら

こんにちは、ヴィレッジヴァンガードの関戸です。今回は、私が店長になりたての頃のエピソードを交えながら、ヴィレヴァンの原動力である「仕入れ」はどのように行われているのか、その辺を解き明かしていきたいと思います。おそらく世の中の小売チェーンの中で最も違う部分がここなのかもしれません。今回もまた個人的な見解が少なからず含まれることはご了承ください。

横浜の観覧車とジェットコースター

お台場店からまた下北沢店へ戻り、アルバイトのリーダーとして働いていたとき、マネージャーから声をかけられた。「来月から横浜よろしく」。シンプルな辞令である。横浜みなとみらいの観覧車横にある店舗の店長を任されることになった。「横浜やばくて、3カ月で売上改善できなかったら閉店しようかと思っているんで頼むね」「はっ、はい」「まあ、そういうこと」。「そういうこと」って、どういうことだったか翻訳すると、前年比ぶっちぎりの最下位。スタッフもどんより。お店の状態も最悪に近かった。なかなかの逆風が吹き荒れる中、ミッション遂行には時間がなかったので、フルマラソンを全速力で駆け抜けるイメージでかなり強硬なスケジュールをたてた。負け慣れた既存のスタッフは「そんなの無理でしょ」と半笑いだったのだが、こっちはいたって本気だった。新しいスタッフも入れてオペレーションからレイアウト、品揃えまで総入れ替えというボリューム満点フルコースを順次決行した。

書店・雑貨店とは到底思えないようなガテン系の働き方をフルスイングで続け、食事なんかもマラソンの給水所にあるスポンジ程度で済ませていたため、たまに疲れてレジで立ち続けられないような時もあった。そんなときは、空気でふくらました身長2メートルくらいのフランケン人形をレジ係りとして置いておいた。こいつがなかなか愛嬌のある顔をしていて、お客様にも案外好評だった。レジでチーンとベルを鳴らしてもらったら、フランケンをどかして休憩中のスタッフが現れる。そのときのフランケン君には、本当に感謝だ。ありがとう、フランケン君、いい仕事です。

そんなフランケン君とともに、激しい日々を過ごして、みんな、体力的にはへとへとだったのだが、反面、気持ちは晴れ晴れしく充実していた。みるみるうちに売上は上昇し、3か月以内で前年クリアどころか全国トップまで上り詰め、「無理でしょ」と言っていたスタッフたちも、目の色を変えていった。店長になったとたん、難しいミッションを背負ったおかげで店長というポジションの面白さを一遍に味わった。まるで一気に最高速度に加速するジェットコースターのようなスタートで、店長としてのスキルもハイスピードで身につけたような気がする。

レジのなか 全スタッフ音速で作業

フランケン君に貼っていた名札

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