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健康・医療・美容でビジネスをするためのコラム

ヘルスケアビジネスは、いつもとなりにずっといる 第1回「健康長寿沖縄県の真実と現実」

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【前回のコラム】
「全体設計と戦略PRが大事——ヘルスケアマーケティングに大切な4つのこと②」はこちら

『生活者ニーズから発想する 健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』
著:西根英一/発行:宣伝会議(2015/3/1発売)詳細はこちら

3月4日(水)に僕の拙著『生活者ニーズから発想する 健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』出版記念セミナーがありました。日本青年館国際ホールの会場を埋め尽くしたおよそ200名の参加者の多くは、食品、化粧品、医薬品、家庭用品・トイレタリーの企業に勤務される方々です。「ヘルスケア商品」を製造しています。IT・情報通信やメディア、そして私と同業の広告業も目立ちました。彼らは、「ヘルスケア情報」を構築する側に立ちます。面白いところでは、金融、教育、音楽に携わる方々です。世の中の風を読むには、ヘルスケアの動きは欠かせないのでしょう。きっとそのうち、恋バナ(恋の話)を歌う恋愛ソングじゃなく、健バナ(健康の話)を歌う新ジャンルができたりするかもしれません。だって、落語の世界も漫談も、だいたい人の病気や健康や美容をネタに笑ってきました。僕らの生活は、ほとんど《ヘルスケア》で囲まれています。知り合いに会えば、「どう?最近元気してる」、英語でも“How are you?”と挨拶を交わすように、ヘルスケアビジネスは、僕らのいつもとなりにずっといます。

いま、真実を言おう

「健康長寿県」といえば、誉れ高きは沖縄県。正確に言うと、「誉れ高かった」という過去形です。いま沖縄は、決して健康県でも、もはや長寿県でもありません。たばこを吸う人は年齢、性別問わず多いし、アメリカナイズされた食文化により、塩分過多、糖分も摂りすぎの傾向だし、さらに歩かないことでは、日本代表の確固たるレギュラーポジションを譲りません。で、結果はというと、喫煙によるCOPD(慢性閉塞性肺疾患、いわゆる「タバコ病」)や肺がんの罹患率は全国平均より高く、食生活の乱れや運動不足がたたる肥満率にいたっては日本一を誇り、職場の健診で異常があった人の割合は2011年から3年連続で全国ワースト。沖縄県は堂々の「生活習慣病県」となっています。
でもなぜに、沖縄は「健康県」のイメージが定着しているのでしょう?
どうも沖縄の健康イメージは、身体的(フィジカル)に健康かどうかよりも、精神的(メンタル)かつ社会的(ソーシャル)な健康度合に依存しているようです。たとえば、こんな曲は沖縄の社会的キズナを象徴します。「ゆい、ゆい、ゆい、ゆい、ゆいまーる ♪ ゆい、ゆい、ゆい、ゆい、ゆいまーる ♫」(琉球民謡。作詞:坂田英世、作曲:知名定男)は、ユイマール(「ユイ=結い」+「マール=順番」)という生活共同体による労力の相互交換を歌っています。この「ユイマール」精神という社会概念のほかにもう一つ、沖縄社会を象徴するのが、「モアイ」(模合)というリアルな金銭的相互扶助の寄合の存在です。自由気ままを楽しむ会合としても親しまれています。このようなソーシャル(社会)のつながりが、メンタルの解放区になっているのは確かです。
イチロー・カワチ氏(ハーバード大学公衆衛生大学院教授)によると、「ソーシャル・キャピタルが高い地域ほど、自ずと交換する情報量が多く、その解釈や理解の度合いは高くなり、人間関係は円滑で、ストレスも減り、健康である」ことが多国間比較において証明されています。

これから、現実を見つめよう

このソーシャル・キャピタルという社会基盤に介入することに成功すれば、沖縄県は健康長寿県として復活する可能性を秘めています。健康長寿県の復活は、沖縄県にとって重点課題の一つです。県民の健康は、県民個人のメリットを生むだけでなく、社会活動の源泉であり、経済界の商材資源であり、行政のシティーセールス資源であり、つまりは、健康には商機を生むだけの価値があるからです。
長寿再生をテーマに健診・検診の重要性を提唱する「とりもどそう!健康長寿おきなわ!『健康おきなわ21』」(企画:沖縄県)や、食をテーマに地域住民の健康行動を向上させる「沖縄健康行動実践モデル実証事業『ゆい健康プロジェクト』」(企画:沖縄県、琉球大学)のほか、肥満解消をテーマに体重を健康的に1キロずつ減らす「健康うちなー未来プロジェクト『イチキロヘラス!チャレンジ』」(企画:琉球新報社、沖縄テレビ放送、ラジオ沖縄)、生活習慣改善をテーマに4万人が参加した「RBCおきなわ健康長寿プロジェクト『みんなで歩こうキャンペーン』」(企画:琉球放送、博報堂DYメディアパートナーズ、協賛:沖縄ファミリーマート)のように、さまざまの沖縄健康プロジェクトが産官学一体となって大々的にはじまりました。テレビやラジオや新聞や街中のポスターやチラシは、こんな健康推進情報に溢れています。
沖縄の健康プロジェクトを見に、沖縄に旅行してみるのはいかがでしょうか。

※本を紹介する当シリーズは、以降、隔週で全4回続きます。第2回は「ALSアイスバケツチャレンジをマーケティングしてみる」です。


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西根 英一氏 
マッキャンヘルスケア ワールドワイドジャパン CKO(最高知識責任者)

健康・医療・美容のマーケティング戦略とコミュニケーション設計を専門とする。マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師(「健康サービス論」「調査法」ほか)。日本広告学会、日本臨床腫瘍学会の正会員、日本メディカルライター協会、日本医学ジャーナリスト協会の協会員。厚生労働省「すこやか生活習慣国民運動」(健康日本21)の推進室室長等を歴任。3月に、宣伝会議から『生活者ニーズから発想する 健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』が刊行。

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