なぜ企業は新規顧客にばかり目が行くのか?――ファンとの関係を新しい顧客との出会いに生かす キリン×ニューバランス×フォルクスワーゲンの取り組み

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必要なのはエンドユーザー目線の発信

今回の研究会では酒類・飲料、自動車、スニーカーとまったく価格帯の異なる商品を担当するマーケターが集まったにも関わらず、「現在のファン」「現在のユーザー」を知り、またこの人たちとの関係を強化することが、新規の顧客獲得にもつながっていくという認識に共通点が見えてきた。

ニューバランスの鈴木氏は、マーケティング部にとっては「Media Experience」が大事だが、お客様の視点から考えると一番大事なのは「Usage/Service Experience 」の順に重要なので、ブランドとしてのサービスデザインを見直す必要があると考えている。

キリンの小川氏は「ビールのような商材だと、どうしても企業は新規顧客獲得に目が行きがちだが、いま現在、当社のブランドのファンでいる方たちの気持ちを深く知ることから、新規のお客様に提案する切り口も見えてくる」と話した。

小川氏は、キリンがオンライン上で行うファンとの対話・共創コミュニティである「キリンビール カンパイ会議」にも立ち上げから携わっている。

ニューバランスの鈴木氏も「スポーツブランドの場合は特に、商品を使用する体験そのものが、ロイヤルティ構築に大きな影響を与える。ただし、この部分は企業から見えない領域でもある。体験価値を高めるために、アプリなどのデジタルを駆使し、いかにして買う体験、さらに使う体験を進化させられるか、が最近の課題」と続けた。

フォルクスワーゲンの鶴氏も「最近、自動車の購買行動の変化を感じる。ネットや周囲の口コミで情報を吟味し、ほぼ購入する車種を決めてから販売店に足を運ぶ人が増えている。それだけに、口コミの影響度がこれまで以上に重要になっている」と話し、すでにオーナーになっている人たちのインサイト把握や、オーナーを介した発信を重視しているとの考えを提示した。

さらに「メーカー目線の情報発信では、消費者は振り向いてくれない。お客様から見ると、どんな風に見えるのか。エンドユーザー目線での情報発信、コミュニケーションが必要とされている中で、オーナーとの接点はますます重要になる」との考えを述べた。

店頭での最後の後押しをテクノロジーで支援する

一方でフォルクスワーゲンの鶴氏が、顧客接点の中で重要な瞬間として「人」を挙げ、店頭ショールームでのお客様とスタッフの接点を重視していると話しているように、実際に商品購入の場、店頭が重要であることは変わらない。

研究会では、この店頭でのコミュニケーションをデジタルやデータの力で支援できないか、というアプローチについても議論がなされた。

キリンの小川氏は「当社の場合、ビジネス上で重要な瞬間を言えば当然、店頭。買う瞬間、買う直前という最大のチャンスに、背中を押せる支援をデジタルマーケティングで実現できないかと考えている。具体的には顧客分析をもとに、小売店店頭でも最適なレコメンデーションができる仕組みを作れないか、と考えている。その意味で、新しいデバイスやテクノロジーの動きには、常に関心を持っている」と話した。

他ブランドとのコラボが新しいニーズをつくりだす

加藤氏からは、6月にニューヨークで開催されるイベント「Salesforce Connections」についても発表があった。世界からマーケターが集まるこのイベントに「JAPAN CMO CLUB」の有志が参加の予定。

加藤氏からは、6月にニューヨークで開催されるイベント「Salesforce Connections」についても発表があった。世界からマーケターが集まるこのイベントに「JAPAN CMO CLUB」の有志が参加の予定だ。

加藤氏はディスカッションを受け「カスタマージャーニー、さらにその中でも重要な瞬間を共有すると、具体的なコラボレーションのアイデアが多く生まれてくるという手応えを感じている」と話した。

実際、鈴木氏からは「商品を購入する場が違う業態でも、ターゲットが似ている企業とは積極的にコラボレーションした方がよいと感じた。また購入した後、商品を使用・体験する場でも、他のブランドとコラボレーションできるのではないかと考えている。例えば『ランニング ニューバランス』という言葉で検索されるのは当然だけれど、もしかしたらランニングをした後に、ビールを飲みに行く人もいるかもしれない。そう考えると『ビール飲みたい ニューバランス』みたいな言葉で検索されるような仕掛けをキリンさんなどと組んでつくれるかもしれないと感じる。こういうコラボレーションができると、これまでなかったニーズをつくりだし、新しい顧客との出会いも生まれると思う」と話した。

こうしたアイデアを受け、加藤氏は「異なる商材の企業であっても、カスタマージャーニーを発表しあう中で、メディアや顧客層でジャーニーが重なる部分も見え、今日の研究会では特に具体的なコラボレーションの方向性も見えてきた」と総括した。

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