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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

ネット文化は『電波少年』の影響を受けている—土屋敏男×谷口マサト対談(上)

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他でやっていないことをやるのが、新しい表現につながる

境:谷口さんは企画しているとき、他の人がやっていないというのはポイントにします?

谷口:そうですね。ネットは0円でつくるという文化。それはそれでよかったんですが、私はいま制作費を1本100万円ぐらいかけて、チーム5人でつくっています。それもチープなんですけど、スマホで見るんだったら小さくて許されるので、コスパの良いものを意図的に狙っている。

境:それは、ある程度手をかけないと、チープなネットの世界で際立ってこない、目立たないということ?

谷口:そうですね。いかに貧乏くさくつくるかというのを競争しているので、差別化しやすい。

土屋:だから、普通はそこにお金をかけないのに、かけるのかというのもあり。タレントに掛ける予算を0にして、その先にかける。こっちに手間かけるのかよ、というバランスが他と違うから面白いんですよね。

谷口:そうです。ネットはリーチが狭いので有名芸能人を使ってもペイしないことが多い。企画性に力を入れた方が、効率がいいのです。ただ、もう少しリーチが広がれば変わってくるかもしれない。

土屋:そこで、うっかり有名人を使うとろくなことない(笑)

あくまでもそこら辺のおばちゃんをつかっていないと、谷口さんの「虎の話題」もリアリティがあって、恋をしたおばちゃんが透けて見えるから面白い。

境:あのおばちゃんはどう選んだんですか?

谷口:探し回りました。素人の方なので、インタビューをした上でつくっています。もちろん演出はしてますよ。

境:出演者にはお金をかけていないけど、意外にこだわってるんじゃないっていうのは大事なんですかね。

土屋:「そこに手間かけんのかよ」というのが大事。結局、ものづくりって頭のおかしさですよね。ああ、結局そうなったかと結論が分かるのは面白くない。そっちにいくのかよっていうのが面白いわけじゃないですか。

テレビとネットで、何が違うのか、同じなのか?

境:さっき谷口さんが言ってた、ネットでドキュメント性を目指すというのは、どういうこと?

谷口:ネット初期のユーザーがリアリティを求めた。いろんなものを暴いたり、真実をもとめた人が多くて、まじめなんですよね。リアルじゃなきゃ受けない。私の企画でも、ワインのソムリエは真剣に選んだり、ダイハツの車を茶室にしたり。何かしらリアルがないと、ネットでは受けない。チャンスなのは、スマホによってフィクションにも広がっていること。

境:えっ、フィクションに広がっている?

谷口:若い人はリアルかどうかあまり気にしないんです。面白いかどうかが、メインの関心事なので。

境:ネット文化は次のステージに向かおうとしている?

谷口:個人的には、そう思います。黎明期は想像力が許されなかった時代だったけど、最近はゆるくなっている。

LIFEVIDEO代表 土屋敏男氏

土屋:なんかもう行くとこまで行っちゃってるし、リアリティという幅がなくなっているから、そんなことをちまちま言っているよりも面白いものだったら、という感じかもね。スマホで見ることが特別じゃない人たちは、そういう感じになっているんじゃないですかね。

谷口:みんなスマホで、友達とリアルな情報に接しているので、それに打ち勝つにはどうするかというのは悩みますね。サービスとコンテンツが分かれていない。ただ、ネットはここ10年プラットフォームをどうつくるかということをやってきて、テレビでいう箱をつくった段階。そこに何を入れるのかという、ようやくもう少しコンテンツないのか、という段階に来ている。

境:谷口さんはネット系の人の中では、コンテンツづくりをやろうとしていますよね。

谷口:そうですね、ネットはまだ8割方プラットフォーム文化なので、コンテンツはあと何十年かかるんだろうという感じです。

境:土屋さんも相当ネットで実験をやっていますが、テレビとネットではつくり方をかえなきゃいけないのでしょうか。それとも、根本的に同じなのか。

土屋:僕も反省したんだけど、テレビマンって客がいる箱でしか作ったことが無い。お客さんが最初からいるものだと思っていて、そのお客さんに面白いって言ってもらうことからスタートしちゃう。でも、ネットは客が入っていない、ゼロの箱かもしれない。そこに誰もいないかもしれないところから、スタートしている。テレビの作り手は、ものすごく完成されたビジネスモデルのなかにいるので、その癖を一回捨てないと絶対にネットコンテンツはできないと思う。

境:お客さんがゼロという話で、谷口さんにはいまはファンがいますが、最初にモノづくりした時はどうだったのですか。

谷口:「バカ日本地図」が一番最初に注目を集めたんですけど、100本うって1本ひかかったな、という感じですね。誰も見ていないから勝手に出せる。いつもライターを探しているんですけど、まずは自分で誰も見てないところから上がってきた人じゃないと信用できないですよね。

境:人気がある人はゼロから作ってきた人ですよね?

谷口:だから、そういう人はひっぱりだこ。足りていないですよね。ちゃんとユーザーに受けいれられて、広告のバランスもとれるという人はどこも探しています。

境:谷口さんはテレビ見ます?

谷口:ちらちら、としか見ていないですけど。朝ドラは、みますよ。いまドラマの手法を勉強したいんです。ネットってストーリーが無くて、「かわいい猫が出てればPVがとれる」という世界だったんですけど、もう少し長編化するには、ストーリーが必要だと。そうなるとテレビはいっぱい持っているので、その辺も土屋さんにお聞きしたい。ドキュメンタリー的な見せ方でも、どういうパターンもあるのか、まだネットには足りていないんですよね。

土屋:たぶん、ドキュメンタリーてこうやってみたら、こうなったという「あいだ」が重要じゃないですか。この「あいだ」を表現するかしないかということだと思います。だからやっぱり、ネットで普通行われているのは、「こう思ったからやってみた」。そこには、何でそう思ったのか、途中はどう思ったのか、ということが足りない気がしますよ。

ようするに、僕が電波少年といったドキュメンタリーバラエティ、アメリカでいうリアリティTV。電波少年でやった無人島の「15少女漂流記」とかも、「明日リタイアしようと思ったけど、やっぱりリタイアは止めました」という心理状態の動きに重きを置いている。

谷口:内面なんですね。私はいまちょうど少女マンガを勉強しているんですけど。それは、男性マンガよりも内面の描写が多いというのが、ネットに使えるんじゃないかと調べています。いま、お聞きして思い出しました。

境:「世界の果てまでイッテQ!」でも、芸人に無茶させるというのが発端でも、芸人の人間ドラマで、感動させていますね。

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