データによる結果検証で説明責任を果たす
——最近、auブランドの「三太郎シリーズ」のテレビCMが好調と思いますが、クリエイティブを変えた理由には、何かauブランドとしての課題感などがあったのでしょうか。
矢野:今、携帯業界でもコモディティ化が進んでいます。以前は各社によって料金プランや、端末デザイン、商品・サービスに色があって、それらを訴求する広告がつくれたのですが、各キャリアの商品・サービスにほとんど差がなくなっているなか、これまで通りのコミュニケーションでは、お客様に振り向いていただけないということを実感していました。そこで、商品やサービスを全面に訴求するのではなく、まずはauというブランドに対して好意を持っていただけるようなコミュニケーションが重要と考え、TVCMも新しい「三太郎」フレームに変えて展開しています
小和田:商材は違いますが、同質化、コモディティ化の悩みは同様に抱いています。私どもの商品は、すでに多くの方にお使いいただいているような汎用価格の商品が多く、その中でも、宣伝を見て商品を購入しようと思ってもらえる類いのものと、宣伝とは関係なく値段によって購入される類いのものがあり、こうした中で宣伝の役割は何だろうということを考えています。今は、デジタルが発達してきているので、宣伝が起因となり店頭に足を運んでいただき、商品を購入してもらうまでがデータで計測できるようになり、KPIにそった色々な施策を行っています。もちろん、ブランド認知の向上や、ブランドサイトのクリック数を増やすことも考えていきますが、やはりメーカーですので、最終的には商品の購入に繋がる宣伝とは何かということを今、突き詰めようとしております。
——広告や宣伝で実施した結果に対する社内への説明責任が、以前よりも求められるようになっていると思うのですが。
小和田:宣伝部はかつてコストセンターと言われることもあり、役割や人員を削減された時代もありました。今は、デジタル技術も発達し、これまで推測するしかなかった媒体の価値がリアルに分かるようになり、お客様の行動も見えるようになってきました。説明を裏付けるデータの種類が増えたので、説明責任を果たすという点では楽になっていると思います。昔は、新聞の発行部数や、雑誌の読まれているターゲット層から「たぶんこの雑誌はこういう特集だから読まれるだろう」という推測で事業部の方に説明をして出稿していた時代もありましたから。
矢野:私たちは広告宣伝の評価として、どれだけのお客様にauショップへ足を運んでいただけたかを指標に掲げています。小和田さんもお話されていましたが、以前はこうしたデータはなかなか取れなかったのですが、最近ようやく取れるようになってきました。今は、そのデータを元に、宣伝の力でどこまで店舗への送客をリフトアップできたかを数値化して見せられるようにするところを課題として取り組んでいます。
——最後に、今回の議論で気づいたことや感想をお聞かせください。
小和田:宣伝というのは、いかにお客様とのコミュニケーションをつなげていくかということだと改めて感じました。そのため、世の中で起こっていることや、関心の幅を常に広げていなければ面白い施策を生むことはできないでしょう。また、コモディティ化が進むなか、自分達の商品を選んでいただくには単に商品が優れている機能を訴求するだけでは不十分ということも痛感しました。これからは、ますますコミュニケーションが購買行動を左右したり、ニーズを発掘するという点でマーケティングを変えていくきっかけがあるのではないかと思います。
矢野:私も、やはりコモディティ化はひとつのキーワードになっていて、商品やサービスに差がないからこそ、何で差をつけて「いいな」と思ってもらうのかが重要になり、それにはコミュニケーションの力がより一層大きくなると考えています。差がない中でもauを魅力的に感じてもらい、好意を持っていただくところまで引き上げるのは宣伝部ならではの仕事なので、しっかりやらなければと改めて感じています。取り組みとしては、お客様との一つひとつの接点での体験を通じてブランド価値を高めること、コミュニケーションを通じて「私たちはこういうブランドです」と表明していくことの2つのアプローチが大事です。そのような場面で宣伝部がその役割を果たせればと思っています。
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