山井太×国見昭仁「経営の90%はロマンでできている~急成長続けるスノーピーク、異色の経営論」

熱烈なファンを抱え、また「過剰品質」と言われるほどの品質の高さで知られるアウトドア用品ブランドの「スノーピーク」。新潟県三条市の本社は、広大なキャンプ場の中にあり、そこに寝泊まりして出社する社員もいるなど、その独自性で注目を集める。同社の山井太社長は、自身も年間60日近くをテント泊で過ごすキャンパーであり、同社の「顔」としてもよく知られている。そして、電通の国見昭仁氏は、同社の中に「未来創造室」という新部署を設置し、新事業展開のパートナーとして、山井社長と同社のブランド強化に取り組んできた。いま、スノーピークは新たに「人生に、野遊びを。」という言葉を掲げ、都会の人にも自然を楽しんでもらう事業展開を構想中だという。両者の対話から、ブランドのつくり方、そして拡張のヒントをお届けする。

企業は決算書だけで判断するな

国見:

以前、50代のある社長からこんな質問をされたことがありました。「今の50代ってどんな考え方を持っているんだろうね?」。30代の宣伝部長からは「30代の男性って、今どうなの?」と聞かれました。聞いている本人も同世代なのだから、僕よりも本人が分かりそうなものなのに、と不思議でした。でも、人というのは法人として考え始めた途端、個人としての感覚を忘れてしまうもの。本当はどちらも「人と人」なのだから、シンプルに考えれば、戦略はじめ、色々なことがクリアに見えてくる。スノーピークでそれができているのは、法人としての人格が、山井さんという個人の人格そのものだからです。スノーピークはお父さまが立ち上げられた会社で、山井さんは新卒で外資の営業をされていたそうですね。

山井:

ええ。スイス系ブランドの輸入販売会社で企画営業をしていました。入社した時、総務部長から「新入社員を1人育成するのに1億円かかる」と聞きました。ならば辞めるのはそのくらい売り上げをつくってからにしようと決めて、実際には辞めるまでに新規開拓で約10億円を売り上げました。

国見:

自分への経費分はお返しして辞めるというのは山井さんらしい。僕は新卒で銀行に入ったのですが、「決算書だけでものを見るな」とよく言われました。会社に行って社員の表情を見ろ、社内は整理整頓されているか、企業の成長はそういうところで変わってくるんだ、と。今も、それらはすごく大事な要素だと思っています。熱いものづくりは、熱い人間がいないとできませんからね。山井さんは情に厚い方です。実は、山井さんはこれまで僕の前で泣いた回数が一番多い男なんですよ。

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