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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

山井太×国見昭仁「経営の90%はロマンでできている~急成長続けるスノーピーク、異色の経営論」

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経営の90%はロマンでできている

国見:スノーピークの大きな特徴は、社長も社員も自分が本当に欲しいと思う商品をつくって、市場も一緒につくってきたことだと思います。その先駆けが90年代に広がったオートキャンプブームではないでしょうか。あのブームは、どうやってつくったんですか。

山井:80年代中盤に、四駆の新車登録台数比が10%まで増えました。それなのに、四駆でキャンプをしている人をほとんど見かけなかった。でも、車は時代の気分を反映するものです。アウトドアをしたい人は確実に増えているはず、だから四駆に積んですぐキャンプができるような商品を提案すれば当たるに決まっている、と思いました。誰かが気づく前に一日も早くやらなければと焦って、急いで1年で100アイテム近く開発しました。つまり、時代の潜在ニーズをとらえたということなんですが、もっとざっくばらんに言ってしまえば、自分がオートキャンプをやりたかったし、自分が欲しいアイテムなら他人も欲しいはずだと考えたんです。それをロジックで裏付けすれば、四駆の登録台数が10%になったから、ということです。

国見:最近ではキャンプ場の定番になった、「焚火台」を初めてつくったのもスノーピークですね。

山井:焚火台は、課題解決型の商品です。焚火禁止のキャンプ場が広がったときに、何とか焚火をしたいと思って、地表にダメージを与えないで焚火ができる商品を考えたんです。

国見:ほかにも、フレーム・脚・ユニットの組み合わせで自由に屋外にグリルテーブルがつくれる「アイアングリルテーブル」など、スタイル自体から新しい市場をつくりだしていくスノーピークのやり方には学ぶところが多いです。スノーピークでは、ユーザーの声はどうやって聞いているんですか? スノーピークユーザーが集うキャンプイベント「スノーピークウェイ」では、山井さんを筆頭に社員の方々が参加していますね。

山井:スノーピークウェイは、会社の売り上げが一番低迷していた頃に、ユーザーの声を直接聞いてみようと始めたものです。雑誌の「ビーパル」に広告を1ページ打って、参加者を募集しました。ところが、集まったのはたった30組。ショックでした。しかも、その全員が同じことを言ったんです。「スノーピークのテントは高い」「どこに行っても売っていない」と。それで翌年から流通大改革をしました。問屋取引をやめ、取引先を1000店舗から特約店250店舗に縮小し、そのかわりに品ぞろえを充実させました。テントは8万円から5万9800円に値下げしました。1年後、そういう形で参加してくださった方々にお返しをしました。

国見:お客さんに「高いよ!」と直接言われるのと、「高いと感じた人が60%」とデータで出てくるのではメッセージ性が全然違う。結果、企業の動きも変わってくるわけですね。スノーピークは、山井さんが中心となって、ユーザーの「情」を直接受け止めることで、急成長しているのだと思います。山井さんにとって、「経営」とはどういうことですか?

山井:カッコよく言えば、ロマンで物事を考えてロマンチストとして実行した結果、いい商品と売り上げという結果が出る、ということですね。

国見:夢と現実を意識的に行き来するのが社長だと思いますが、山井さんもそういう感覚がありますか?

山井:僕は90%ぐらいロマンの領域にいて、残りの10%が結果を出すための責任感というバランスだと思います。

国見:色々な会社のトップに聞いてきましたが、ロマンが5割を超えると回答したトップは少ない。けれど、ロマンが多くないと絶対にイノベーションは起こりません。続けてお聞きします。スノーピークは焚火台しかり、次々と固定概念にチャレンジする商品を出し続けています。なぜスノーピークはそれをやり続けられるんでしょう?

山井:たぶん、僕を含めうちの社員たちにチャレンジしている感覚は、あまりないと思います。他社がつくっているもののまねは絶対に嫌なので、結果的に今までにないものが生まれてくるんです。

次ページ 「市場は「ある」ものじゃなく「つくる」もの」へ続く