第1話の見所・キーポイント(1)謝罪会見シーンの演出
『リスクの神様』では、聞き慣れない「危機対策室」という部署が登場する。一部の大企業には存在する危機管理専門家が所属する部隊だ。トラブルシューティングといえば話は早いが、それこそあらゆる企業危機を扱う専門家が集まる特殊な存在である。
「リスクの神様」においてもそれぞれの分野の専門家が特性・特技を活かして活動する場面が描かれている。重要な点は、制作スタッフがあくまでリアル感にこだわった点だ。最近のドラマでは、何か起きれば司法当局、解決にはアクションがつきものだったが、「リスクの神様」では企業内外で行われる情報収集や諜報戦(エスピオナージ)などの戦術(ミッション)に焦点を置いている。
さらに、『リスクの神様』では、些細な点においても細心の注意を払い、完成度の高い危機対策を講じている点も見逃せない。撮影時に写り込む危機対策室のPC画面などにも、制作側の要望で実際の作業に準じた画面を作りこんでいる点も『リスクの神様』特有のこだわりがあり、今後ドラマをご覧になっている視聴者の違った意味での関心事になるかもしれない。
台本の中では読み取れないが、第1話でもっとも難しいシーンは「神狩かおり」の謝罪記者会見だったろう。言葉のひとつ一つもそうだが、会見場への入場から最後の謝罪までノーカットで放送された。
注目いただきたいシーンは、会見時の衣装、入場時の歩幅、最初の謝罪時の頭の角度、頭を上げるまでの時間、謝罪時の口調や語るスピード、表情の変化や涙など、監修者として期待する完全な形で「神狩かおり」は演じきった。
謝罪記者会見はスポークスパーソンの善し悪しでほぼ成否が決まる。昨今の謝罪記者会見では、質問に真摯に答えようとしない姿勢や上から目線の口調で、「これは本当に謝罪会見なのか」と非難される事例も少なくない。
記者や視聴者は、言葉の一つひとつから、スポークスパーソンの説明しようとする姿勢、誠意を感じ取ることはもちろんだが、会見時の衣装、物腰、ちょっとした仕草、表情を含めて、あらゆる情報からスポークスパーソンの人間性を総合判断している。「神狩かおり」の謝罪記者会見は、そうした事例の中でもベストプラクティスに準じた最高傑作に仕上がったものと考えている。「神狩かおり」演じる商品開発担当役員の謝罪記者会見をご覧になって皆さんはどう感じただろうか。ぜひ聞いてみたい。
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